AR TECHNOLOGY

New AR Story
 新ARの長年の開発期間において、FELTエンジニアは新世代のエアロロードバイクの目指すべきゴールを確立しました。最高レベルのエアロダイナミクス性能、重量軽減、剛性向上、そしてライドクオリティーの改善が4つの主な目標でした。

 この開発期間において、彼らは1つずつ目標を達成していきました。開発過程の中で、数えきれないコンピューター上のシミュレーションによるフレーム形状の変更と実際のプロトタイプ製作を経ると同時に、エアロロードの汎用性とパフォーマンスの可能性をさらに広げる革新的な技術も生み出しました。
 2008年に登場したオリジナルのARは新天地を開く近代ロードバイク初のエアロタイプとなり、ロードレーシングパフォーマンスの定義を変えました。オリジナルのARは従来のロードバイクと比べ、エアロダイナミクス性能に優れている事は明らかな事実です。

 今回、さらにARのデザインを刷新する理由は、発売後の5年間にFELTが実世界のエアロダイナミクスについてさらに深く学んだからです。また新しい素材と製造方法も開発され、エンジニアにとって、より速いARを生み出すことが現実味を帯びていきました。エアロダイナミクス性能を改善し、より軽量に、より高い剛性で、よりレースで求められるニーズに応えられる様に生まれ変わりました。
TEST
 コンピューターシミュレーションでバイクを比較する場合、考慮すべき変数が数多くありますので結果を把握するのは困難になりがちですが、下記がFELTのエンジニア達が設定したテスト方法になります。
  通常の風の状態の中で300ワットの出力で40Kmのタイムトライアルを走行するのにかかる時間を計測。この条件で FELT F1 を走行させた場合を標準値として設定し、ここから短縮できるタイムを比較しました。このシミュレーションを繰り返し行った結果、新しいARは2分10秒ものタイム短縮という結果がでています。ARは競合の最先端モデルと比較しても2倍近くのタイム短縮効果があり、その驚異的な性能が証明されました。
From Sprints to Time Trials
 FELTは長年プロ・ライダーから協力を得ながら、バイク製作に取り組んできました。ロードレーサーやトライアスリートからのフィードバックは新AR製造開発の要でした。一言で言いますと、ライダーの多くが昨今のエアロロードバイクは従来のロードバイク(軽量、高剛性、シャープなハンドリング)とトライアスロンバイク(エアロダイナミクス)の中間のようであると感じていました。中間であるがゆえに、中途半端な性能になってしまっていた可能性があるという事です。

 その多くはジオメトリーによるポジショニングと密接に関係します。ロードバイクにエアロバーを組付けるだけでは、ハイパフォーマンスなタイムトライアル・トライアスロンバイクにはなりません。無論、タイムトライアルジオメトリーはロードスプリント、コーナリングおよびクライミングに理想的ではありません。ARフレームセットの重量軽減と剛性向上を行う前に、ポジショニングの問題を解決する事を決定しました。

 解決策を模索する中で、エンジニアはVariable Geometry Optimized (VGO)シートポストを生み出しました。72.5度から78.5度に角度を調節出来るシートポストの機構を作り出したことにより、ARはロードとタイムトライアルの両方に最適なバイクとなりました。
 エアロダイナミクス性能はその両方に生かされ、新ARの汎用性がライダーの望むポジショニングを妥協する事なく実現します。

シートポストを後方にセットすると、72.5度+/-の従来のロードレースに最適なポジショニングとハンドリング性能を実現します。

シートポストを前方にセットすると、78.5度+/-のエアロバー使用に最適なアングルに変更されます。
Frame Material & Design
 ジオメトリーを決定した後、エンジニアチームは重量軽減をしつつ、剛性とエアロダイナミクス性能を最大化する素材とチューブ形状の探求を始めました。


↑成型途中のTeXtremeカーボン
 2014年モデルのAR FRDには“スプレッド・トウ”(テープ状)のカーボン素材、TeXtremeを使用しております。このF FRDロードに使用され、Argos-Shimanoワールドツアーチームが使用しているTeXtreme は従来のカーボン素材と比べ、個々の繊維の構造が異なっています。どの様な構造なのかを想像するには、極端に薄いリボンが密になって重なり合っている様を思い浮かべて下さい。この様な構造がより密度の高い理想的なカーボン素材を作り出します。TeXtremeを使うとより少ない素材でより強いフレームを制作出来るのです。

 TeXtreme採用のARは、フレーム単体920gというエアロロードフレームとしては圧倒的な軽量性に最高レベルの剛性を確保し、他社と比較しても高い重量剛性比を達成しています。FELTでは1つの要素で勝るより、全ての面で最高レベルの性能を融合させることを目指しています。

 フレームの剛性向上と重量軽減は切っても切り離せない関係にあります。必要な個所に最適な素材の厚みを加え、ペダリング効率とシャープなハンドリング性を実現する事は非常に困難ですが、これらの要素が合わさって、いわゆる「ライドクオリティー」を生み出す事が可能になります。ライドクオリティーを数値化する事は難しいですが、FELTは新しいフレーム技術を道路上でのバイクのパフォーマンスとライダーが直面する問題の改善の為に取り入れました。構造上の修正は、路面の振動を軽減するシートステーのチューブ形状等があります。シートステーも長く設定し、振動軽減の改善の為、シートステーブリッジを排しました。

 もちろん、TeXtreme 素材のARのみが以前のARより軽量になったのではありません。フレームのデザインと成型技術も軽量化を実現する重要な要素です。再設計したチューブ形状と構造がエネルギーを効率的にフレーム表面に分散させます。FEA(有限要素解析法) によるシミュレーションを繰り返し、エンジニアチームは強度と剛性向上の為、カーボン繊維の最適なレイアップを確立しました。
可変式シートポストの開発
 ARには革新的な新部品であるVariMount (VM)シートポストを搭載しています。スプリット形状のクランプ部は通常のアルミ製のレールだけでなく径の大きいカーボン製のレールにも適合するデザインです。(モデルによりVRシートポストを採用。大径カーボンレールを使用する場合、クランプパーツの交換が必要です。)またシングルボルト方式で簡単に微調節が出来ます。VGO機能にさらに拡張性を与える軽量なシートポストです。 VGO は新ARの高い汎用性を意味します。反転可能かつ、エアロ効果を実現するシートポストを開発することが、ロードレースとトライアスロンの両方のセッティングを可能にしました。ユーザーはシートポストを180度反転させて、シートを再びクランプするだけで、瞬時に72.5度から78.5度にシートアングルを変更する事が可能となります。

 Internaloc(インターナロック)システムを開発するのは非常に困難でした。エアロロードバイクのシートチューブは通常薄くて長いため、ずり落ちない様にポストをしっかりと固定する事が困難です。また、従来のクランプ式の固定方法は部品が大きくなり過ぎ、確実に機能しないものも多く見受けられます。出来るだけ多くのシートポスト固定方法をリストアップして、遂にエンジニア達は使いやすく、確実に固定でき、エアロダイナミクスに優れ、調節可能な方式、Internalocを開発したのです。
理想のフロントフォーク形状
 既存の枠組みに縛られない考え方と、タイムトライアルバイクDAの開発を通して培ったエアロダイナミクスの知識を融合し、よりエアロダイナミクスにフォーカスしたフレームデザインが新ARには取り入れています。その中でもエアロダイナミクス性能を大いに向上させたのは、Twin Tail fork crown(ツインテールフォーク)です。

 長期間に及ぶCFD(数値流体力学)研究と風洞実験室解析の結果、バイクの前方部分、つまりヘッドチューブ、ダウンチューブ、フォーククラウンと空気の流れの逆方向に回転するフロントホイール、これらの部分がエアロダイナミクスの恩恵をもっとも受けやすいということが判明しました。度重なるフォーク形状の変更を経て、空気の乱流を排除し、空気抵抗を最大に軽減するフォーク形状にたどり着きました。

 採りいれたデザインとエンジニアリング工程のことごとくが、重量、剛性及びエアロダイナミクス性能の数値を大きく改善しています。比較すれば、結果は一目瞭然です。最も重要な事は、新ARがエアロロードバイクというカテゴリー全体において大きな一歩を達成したことです。もうライダーはエアロ性能のために他の要素を犠牲にする必要はなくなりました。クライム、コーナリング、スプリント、ゴールへのラストスパートといったロードレーシング性能、さらには時間との戦いであるタイムトライアル・トライアスロンでもこなすことが出来るバイクがARなのです。
AR Feature Glossary ~用語集~
① Twin Tail Seat Stays
(ツインテールシートステー)

 従来あったブレーキブリッジを排したシートステー構造でエアロダイナミクスの向上、軽量化を達成。ギャップシールドリアトライアングルの一部を成しており、乗り心地の改善にも貢献しています。

②-1 VariMount (VM) Seatpost
(VMシートポスト)

 VMシートポストはサドルを確実に固定し、様々な角度に調整が可能です。太いカーボン製のレールや通常のアルミ製のレールでもボルト1本だけで固定出来ます。

②-2 Vibration Reducing Seatpost(VRシートポスト)
 VR シートポストはサドルを確実に固定し、様々な角度に調整が可能です。さらに3TのDiffLockシートクランプ機構とポリマー素材により、サドルクランプ部とシートポスト間で路面からの振動を軽減します。(大径カーボンレールを使用する場合、クランプパーツの交換が必要です。)

③ Internaloc Seatpost Binder Bolt(インターナロックシートポスト)
 フレームやシートポストを傷つけずにサドルの高さを調節出来ます。ポストとフレームに余計な力をかけることなく、確実に固定します。

④ Optimal Airfoil Shape(オプティマルエアフォイルシェイプ)
 フレームは走行スピードと横風も考慮して設計された翼型 (Airfoil) 形状です。

⑤ Gap-Shield Rear Triangle(ギャップシールドリアトライアングル)
 回転するホイールをチェーンステーとシートチューブに沿わせることで、リアトライアングルの空気抵抗を削減しました。

⑥ Sub-Stance Front Derailleur Mount(サブスタンスフロントディレーラーマウント)
 より確実に固定されたフロントディレーラーの取り付け部によりフロントのシフティング、特にスモールリングからラージリングへのシフティングを最適化します。

⑦ Chain Stay Mounted Rear Brake(チェーンステーマウントリアブレーキ)
 ブレーキをチェーンステー下に設置することで空気抵抗を抑え、エアロダイナミクスを向上します。また、剛性の高いBB周辺部分にブレーキが取り付けられている事でブレーキング性能が向上しています。

⑧ Optimal Wiring Entry(オプティマルワイヤリングエントリー)
 フレームの設計段階から、電動コンポーネントのケーブルルーティングを想定してデザインされています。

⑨ Aero Optimized Head Tube(エアロオプティマイズドヘッドチューブ)
 剛性を損ねずに可能な限りヘッドチューブの前面投影面積を削減しエアロダイナミクスを追求しています。

⑩ Twin Tail Fork Crown(ツインテールフォーク)
 特殊なフォーククラウンの形状が、フォークからダウンチューブへかけての乱流を抑え、エアロダイナミクスを大幅に向上。 さらにワイドなクラウン部が、振動吸収性、ブレーキング性能の向上にも寄与しています。
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