FELT テクノロジー

 
フェルトテクノロジー

  フェルトの最新モデルはどれも長い年月をかけて試行錯誤されてきた。はじめに多くの会話が交わされた。プロチームと選手、技術者と企画担当が自らの理念をぶつけあった。ものづくりを始める前に全員の目指すところを合致させる必要があったからだ。本格的な作業はそこから始まっていく。

  まずはコンピュータ設計を駆使するエンジニアがあらゆる寸法のフレームを描いていく。画面上の3Dデッサンにディレーラーやブレーキ、ホイールなどが組み込まれ、各部の機能性をチェックする。実際の試作品を作るのはそれからだ。サイズごとにチューブの形状や肉厚を計算し、数値流体力学(CFD)ソフトウェアを通して分析される。何百時間を費やし、何十回もフレーム形状が見直され、いよいよプロトタイプ制作に入る。こうして形になったものを風洞実験室でさらにシェイプしていく。

 カーボンフレームの成型にもあらゆる試行錯誤が繰り広げられる。できあがったチューブは研究室で静荷重・剛性試験を実施。最も厳しいとされるアメリカやヨーロッパの安全規格を上回る社内規定をパスしなければならない。
 
 こうして完成したプロトタイプは精度、表面仕上げなどを厳格にチェックした上で、最終的にパーツを組み付けてテストライドされる。開発チームとプロ選手の満足が得られなければ、最終的に市販化することはできない。

  もちろんこういった手法はすべてのモデルに当てはまることではない。それぞれの特性に応じてフレキシブルな対応を取ることで、一番求められている部分に注力することができるのだ。簡単に開発できて、それなりの価格で市販できる自転車作りはあるかもしれないが、それはフェルトの選択すべき道ではない。時間はかかるが、いい自転車を生産していくために。
 

 
 カーボンフレーム作りにはさまざまな方法がある。ラグとチューブを組み合わせるやり方は1世紀以上前からスチールフレームを作る手法だった。カーボンの場合は溶接ではなく接着だ。ただしラグとチューブが接する部分は材料が重複するので、重量増はいなめない。

 フェルトはダイナミックモノコックコンストラクション技術を導入した。60T、40T、30Tというレベルの異なるカーボン繊維をミックスさせ、フレーム各部に必要な性能を与えていくやり方だ。これがUHC(ウルトラハイブリッドカーボン)と呼ばれるチューブになった。UHCには3つのグレードがある。UHCアルティメイト+ナノ。UHCアドバンスド。UHCパフォーマンス。それぞれ、異なった乗り手を想定して作られるモデルに投入される。

 たとえば、自転車はすべてが最軽量で、ピュアレーサーだけが乗れればいいというものではない。あるいはパワーを寸分に逃さないほど強いスプリンター向けモデルだけでいいはずがない。フレームのそれぞれの部分にも同様なことがいえる。各所に適したカーボンを選択して投入する必要がある。ボトムブラケットやダウンチューブはどこよりも硬いチューブが必要だ。
 こういったカーボンのブレンドは、CAD、プロトタイプのテスト、トップレーサーからのフィードバックによって確立していく。
 その上で最適なカーボンチューブを製造するための「レイアップスケジュール」と呼ばれるレシピを完成させる。このレシピに応じてカーボンシートが持ち込まれ、それをフレームに必要な大きさに裁断したのちに、CNC切削加工された金型に敷き詰めていく。絶妙にコントロールされた気圧と温度で一体成型していくのである。
 F1、F2といったフェルトのトップモデルはさらに工程数が多い。2011年モデルでは「インサイドアウト」という独占的な成型方法を導入し、余分な材料をカットすることに成功した。
「フレーム内部がきれいになった」とエンジニアのタイ・ブッケンベルガーが証言している。
「特にボトムブラケットの内部は、はみだした素材でクリーンとは言い難かったからね」
ダイナミックモノコックコンストラクション技術は、部分ごとに専用設計されたカーボンチューブを組み合わせることで、フレーム全体に求められる機能を最適化するという最先端の成型技術だ。インサイドアウト技術を組み合わせることで、フレームはさらに進化を遂げた。
「たとえばフロント側の3本のチューブとシートステーに使われるチューブとでは、求められるものが異なってくる」とブッケンベルガー。
「ダイナミックモノコックコンストラクションを導入することで、フレームのあらゆる部分にベストの機能を持たせることができるようになった」
 
 最終的にフレーム部分は、高度な組み立て工程によって接着され、コーティングして仕上げられる。インサイドアウトとダイナミックモノコックコンストラクションは手間のかかる作業だ。しかしその乗り心地と高次元の剛性が高い価値観を示している。

*ダイナミックモノコックコンストラクションはF1、F2にのみ採用されています。
 
 
 
フェルトは現在、3タイプのカーボンを用意。UHCアルティメイト+ナノ、UHCアドバンスド、そしてUHCパフォーマンスだ。
 
  UHC ULTIMATE+NANO
UHC アルティメイト+ナノ
 フェルトの最新技術を集めた最上位素材。最先端の製造技術で高弾性率の材料量を最大化することに成功した。その秘密は樹脂だ。ほとんどのカーボンフレームで使われる一般的なエポキシ樹脂は、カーボン繊維を結合する単なるバインダーとして使用され繊維の間に隙間ができてしまう。フェルトのナノ技術は分子レベルで融合させることで極限まで隙間を圧縮しフレームの性能を高めている。
この技術を採用したことでUHCアルティメイト+ナノフレームはさらなる軽量化が実現できた。ただし現実的には国際規定による最低重量が定められていることから、さらなる軽さを取るよりも強さと硬さを選択した。そのため最軽量で最高レベルの剛性を持つフレームは、信じられないほどの耐久性を見せている。
     
  UHC ADVANCED
UHC アドバンスド

極めて高品位なカーボン繊維を使用することで、ピュアレーサーに軽量でアクティブな乗り心地を提供する。金属フレームがチューブを薄くすることによって同じようなフィーリングを備えるように。UHCアドバンスドフレームの登場によって、とても薄いチューブでフレームをデザインすることが可能になった。その結果、同じ強度、剛性でありながらUHCパフォーマンスより20%の軽量化を達成することができた。
カーボンを使うのはある意味で挑戦だ。製造工程が煩雑なのだ。わずかなカーブが命取りで、こだわったデザインはなかなか挑みにくい。製造工程での破断を考えるとともに、強さを保証しながらどこまで軽くできるのかを常に念頭に置きながら作業を進行していく。
     
  UHC PERFORMANCE
UHC パフォーマンス

自転車フレームとしてカーボンがどれほど有効なのかを実証させたパフォーマンスフレーム。強さは3/2.5チタンの7.9倍、剛性は6061アルミの3.34倍。さまざまな形に形成できて、ほとんど無限の寿命を示す。その耐久性はライダーの求めるところだ。フェルトではUHCパフォーマンスを初級者グレードのモデルに導入しているが、同技術は2010年モデルのフェルト最高級のF1SLフレームセットに使用されたものである。現在のF5は当時の最高級モデルのメリットをすべて取り入れたものなのだ。この価格にしてとんでもない性能を有するモデルを手に入れることができるのである。
 
 
 
Insideout
●インサイドアウト
フレーム成型過程でフレーム内にポリウレタンを仕込み、重量増につながる余分な材料をシェイプ。加圧と加熱もコントロールできるので最適なチューブ成型が可能になる。ボトムブラケットやヘッドチューブに応用。
  Control Taper
●コントロールテーパー
ヘッドチューブは上径1-1/8”、下径1-1/2”のテーパー形状で、フレーム重量を増やすことなく、フロント周りの剛性と操作性を向上させた。コーナリング、ダウンヒル、スプリント時に高い性能を発揮する。
BB30 Bottom Bracket
●BB30ボトムブラケット
ダウンチューブはオーバーサイズ形状で、シートチューブとチェーンステーの剛性を可能な限り強化。ベアリングはカップなしでそのままシェルの中に組み込まれるのでこれまで以上の軽量化も実現できる。
 
 2011シーズンのFシリーズはこれまでよりも100g軽く、35%の剛性アップを実現している。極限までの軽量化、完璧なデザイン、そしてカーボン素材の特性を生かして最適化された設計。2011のFシリーズには革新的な2つの最新技術が導入されている。
 ダイナミックモノコックコンストラクション、そしてインサイドアウトだ。
 ダイナミックモノコックコンストラクションはフレームチューブの製造工程において、それぞれのチューブを別々に設計し、組み立てていくというテクノロジーだ。各部に求められる性能を発揮するようにカーボン生地が積層され、チューブの型に収納される。これ
らは最高級カーボンバイクのスタンダードな製造方法ともいえるが、フェルトはさらにインサイドアウト工法を製造過程に追加してい
る。カスタムデザインされたポリエチレン素材をチューブ内部に挿入し、最終的に成型するのだ。余分な素材をカットし、内部をクリーンな状態にする。さらなる軽量化が実現したのである。熱処理された各チューブは最新の接着技術とラッピングによってフレーム成型される。外から見ても、内部をのぞいても、完璧なフレームができあがるのだ。サイズごとに金型が必要となるために、ダイナミックモノコックコンストラクションはとても手間がかかり、製造のために投資するコストもかかる。しかしながら800gを切る軽さでありながら35%の剛性強化を実現するフレームが誕生するのだから、極めて意味のある投資だといえよう。
 なおジオメトリーにも全面的な見直しと詳細な検討が行われ、より速くより快適なフレームが実現している。
 

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