【インプレ】FELT NEXAR FRD|新ジオメトリーはエアロの概念を変えるか?クライマーが試乗して見えた真価

本格的エアロロードを初めて世に送り出したFELT。その「AR」が「NEXAR(ネクサー)」と名前を変えて遂にモデルチェンジを果たしました。

 

私自身、ARは歴代モデルをインプレしてきた経験があり、特に前世代モデルはエアロロードらしからぬ踏みやすさ、走りの軽さ、乗りやすさを備えており、本気で購入を検討したほど気に入っていました。それは「空力によるアドバンテージと従来のロードバイクの性能をいかに両立させるか」という問いの具現化だったわけです。

しかし、新たに発表されたNEXARは、これまでにない尖ったコンセプトとジオメトリーを採用しています。スペックや数値を浅く読み解くだけでは、「平坦を高速巡航するためだけのバイク」に見えてしまいました。普段、山岳でバイクを振り回す楽しさを重視している自分には合わないのではないか——。

そんな疑問を抱えつつ、新型 FELT NEXAR FRD を329km、じっくり試乗しました。先に結論をお伝えすると、「FELTはロードバイクの新しいスタンダードを作り出してしまった」というのが率直な感想です。

 

これに乗らなきゃディスアドバンテージになる!?

まず驚かされるのは、やはりそのエアロ性能です。普段の巡航域である30km/h台では、同じ出力感で走っても、巡航速度が明らかに2〜3km/h引き上げられます。特に一度スピードに乗ってからの速度維持に必要なパワーが劇的に少なく、「これまでどれだけ空力で無駄な力を使っていたのか」と愕然とします。平坦が得意ではない私は、普段なら早々に先頭交代を促すのですが、NEXARに乗っている間は「いくらでも先頭を引ける」という錯覚すら覚えるほどです。

40キロを超えてくるとその性能はさらに明白で、特に下りではすぐ前走車に追いついてしまうし、加速しすぎてブレーキングポイントの修正が必要になるレベルです。単に「ノーマルロードにエアロ形状を取り入れた」程度のバイクとは一線を画しています。

さらに驚きなのが、30km/h以下の低速でさえエアロ効果を感じられる。超低パワーで流している段階で、それなりのスピードが出てしまいます。

もう、なんとなく速い、アドバンテージになる、とかいうレベルではなく、レースや集団走行において「これに乗っていなければ明確なハンデになる」と感じさせる次元です。

初めてスポーツバイクに乗った時、初めてロードバイクに乗った時の感動。そんなスポーツバイクを趣味とする方なら誰にでも覚えがあるあの瞬間を、NEXARがもう一度、体験させてくれました。

NEXARは「エアロだけのバイク」になってしまったのか?

発表されたNEXARの資料を見る限りだと、あまりにスペック上の空力と軽さを重視するあまりに、乗りにくいバイクなのではないか?ダンシングが楽しくないのではないか?踏み方を固定されるのではないか?という疑念を抱いていました。

しかし、いざ乗ってみるとエアロロードであることをすっかり忘れている自分がいました。平坦や 下りが抜群に速いのは確かなのですが、登りも含めて全方位に速いのです。バイクを振り回しても最高に楽しいダンシングバイクでもあります。

ケイデンスの許容範囲も広く、高回転を強要されるような癖はありません。むしろバイク側がペダリングをアシストし、自然とスムーズな回転へ導いてくれる感覚があります。特に登りで脚が削れてきてから、シッティングで回転を保ったまま粘り強く踏み続けられるフィーリングが秀逸です。

よく、「初めて乗った瞬間から走りやすい」と言われるFELTフィールも生きています。先代ARはエアロロードらしからぬ踏みやすさが美点でした。その点ではNEXARも進化の延長線上にあります。見た目はバキバキのエアロロードですが、これはもうオールラウンドロードと言えるのではないでしょうか。そう考えると、ピュアエアロロードとしては低めの45mmハイトホイールをあえてアッセンブルしている意図が見えてきます。

誰のためのハイスタック&ショートリーチなのか?

NEXARで最も議論を呼ぶのが、「高めのスタックと短めのリーチ」という独自のジオメトリーです。

私が乗っているFR 3.0の54サイズと比較すると、スタックが+11mm、リーチは-5mmです。しかも、そこに立ったシートアングルが加わります。懐が狭い、詰まったポジションになって、アタックやスプリントをするようなレースシーンには適さないのではないかという強い疑問がありました。

まずはポジションの実測と検証を行いました。

サドル−ブラケット間の高低差: NEXAR専用ハンドルはコラムスタックが低く、前下がりの形状をしているため、コラムスペーサー0の状態で実測したところ、FR(130mm 6°ステム)とほぼ同等でした。NEXARも実質的なスタックはそんなに高くありません。

リーチ: フレーム単体では−5mmですが、FRに使用している130mmステムを考慮すると、ブラケット位置は計算上35mm近くなります。

今回、329km乗り込んでみた結論は「NEXARのポジションを今までの常識で考えるな」です。普段より35mmもブラケットが近いはずなのに、大きな違和感を感じないことに驚きます。

レース志向のライダーがハンドルを低く遠くするのは、トルクを掛けてペダルを踏みたいというのが多分にあるはずです。ところがNEXARの場合、専用ハンドルも含めたバイク全体のリジッド感が絶妙で、従来のように「ハンドルを低く遠くして力で踏み込む」必要が無い不思議な感覚なのです。

シッティング時は、バイク側がケイデンスを保つようアシストしてくれる感覚があります。立ったシートアングル、ショートクランク、重心位置、絶妙な剛性感。すべてが計算ずくであることを強く感じました。

そしてFELTの主張通り、従来よりアップライトなジオメトリーはコンパクトなエアロポジションが維持しやすいことは間違いありません。実際、かなりのアドバンテージを体感できました。このアドバンテージを実現しながら、アタック、スプリント、加速性能を犠牲にしないバイクを仕上げてきたことに感動を覚えます。

専用ハンドルが、昨今主流の形状とは少し違うことにも注目です。下ハンドルの奥、スプリント時に握るポイントを見ると、シャローなどと呼ばれるクラシックベンドに近いきついカーブになっています。これによって、ブラケット部分は近いポジションを実現しながら、スプリント時はハンドルをがっちり握って、深いポジションを取れるよう考えられていることが伺えます。

私の場合、デフォルトのハンドルリーチのままでも乗れるのですが、アタックやスプリントを考えると、現状から+10~20mm、従来のポジションと比べて-15~25mm近めがベストなポジションになりそうです。

一部の海外レビューで指摘されていたハンドリングやダウンヒルですが、至ってニュートラルで拍子抜け。それもそのはずで、ヘッド角、フォーク長、フォークレイクはほぼ変わっていません。ただしシート角が立っており前荷重になりやすいので、ダウンヒルでは意識的に後ろに腰を引く動作と、それを許容するサドル選択が大事です。また、空力効果でスピードが出すぎるので、ブレーキングポイントも変わってきます。そこは良い意味で注意が必要です。

FELT新体制でトップになったセサル・ロホは、現在のMTBでスタンダードになっている「フォワードジオメトリー」を開発したまさにその人とのこと。きっと彼はロードバイクに置いても新しいスタンダードを作り出したと後に言われる人物になるのではないかと予感させます。

高性能の理由は単にホイールのおかげではないか?

NEXAR FRDの完成車パッケージには、VISIONの超軽量カーボンホイール「METRON 45 RS(1,290g)」が採用されています。「この走りの軽さはホイールの性能によるものではないか?」という疑問を検証するため、あえて手持ちのアルミリムホイール「ALEXRIMS RXD2(30mmハイト、1,460g)」に換装してテストを行いました。

結論、平坦における爆速感は薄まりますが、それでも空力的アドバンテージは明確に感じられます。一方、登りの速さや軽快感はあまり損なわれません。METRON45 RSが良いホイールであることは間違いありませんが、フレーム自体が持つ空力性能と登坂での軽快感・応答性はしっかりと維持されていることが確認できました。

空力面で大事なのはホイール単体の性能だけでなく、フレームとのマッチングが重要ということも感じました。その点でやはり標準ホイールはNEXARの空力を最大限に引き出してくれるのでしょう。

NEXARはヒルクライマーにおすすめか?

結論から言うと、非常におすすめ。もう、エアロロードというくくりで考える必要はありません。そこらの軽量ロードより登りますし、何より登りが楽しいです。特に私みたいに「一番近い峠まで片道50kmの平坦を走らなければならない」「登りは好きだが、そこに辿り着くまでのアプローチで消耗したくない」という方には、これ以上ないパートナーになります。

まとめ:ロードバイクの新しいスタンダードを体感せよ

FELT NEXAR は、単なる「軽量化されたエアロロード」でも「ただポジションを高くした快適ロード」でもありません。独自のジオメトリー、計算された空力性能、そしてFELTならではの扱いやすさを高い次元で融合させた、まったく新しい世代のロードバイクです。

平坦の圧倒的な巡航性能はもちろん、登坂での軽快感や長距離でのポジション維持のしやすさなど、あらゆるシーンでライダーに明確なアドバンテージをもたらしてくれます。「これに乗っていなければ勝負にならない」と思わせるほどの進化を、ぜひ知ってほしいです。

 

今後、ショップやイベントで試乗会を開催していきますので、是非ブログやInstagramをチェックお願いいたします。