国内トップチームで活躍した実績を持つ元プロ選手・岸崇仁さんによる、FELT Bicyclesのグラベルバイク「BREED」のインプレッションをご紹介します。
インプレ車種はコチラ! → BREED Advanced Frame

ここ数年、「グラベル」という言葉が自転車界で流行語になりつつある。
グラベルとは未舗装路(砂利や芝など)、つまり荒れた路面を指すが、正直、自分はこれまであまり興味を持つことはなかった。
そんな中、グラベル世界選手権にロード選手が大勢出場しているのを目にし、その白熱したレースの展開や選手たちの走りを見ているうちに、グラベルの魅力に徐々に引き込まれていった。
それと同時に、昨年末のご縁からFELT Bicyclesのグラベルバイク「BREED」に乗らせていただく機会を得た。
興味がなかった自分がその領域に足を踏み入れることになるとは驚きだが、このチャンスを通して感じたことを、今回のインプレッションとしてお届けしたい。

BREEDはグラベルレースに特化したレーシングバイクであり、その見た目は昨今のエアロロードバイクを思わせる洗練されたエアロ形状が特徴だ。
フレームを細かく見ていくと、BREEDには他社製品によく見られる「見せ場づくり」のギミックがなく、純粋に速さ、安定性、剛性を追求していることが伺える。
無駄を削ぎ落としたデザインは、まさに走りに特化した一台という印象だ。
近年はフル内装が主流となりつつあるが、グラベルバイクでは泥汚れとの戦いが避けられない。
そんな中、このBREEDの外装ケーブル仕様や一体型ではないハンドルの採用は非常に実用的だ。
特に、私はハンドルとステムが別体であることを好むので、この設計には感心した。
さらに、オーソドックスなジオメトリーのおかげでポジション出しが容易なのも大きなポイントだろう。
初めてグラベルバイクに乗る人にも優しい設計だと感じた。

そして肝心の走りだが、ファーストライドの時点でその速さが際立っていた。
舗装路での走行性能をそのままに、未舗装路でもそのスピード感を損なわないのは驚きだ。
さらに、振動吸収性にも優れており、これまでマウンテンバイクで行っていたようなトレイルでも、BREEDは難なくこなしてくれた。
特に感動したのは、ガレ場や大きな段差でもこのフレームの性能がしっかりとライダーに伝わり、「人馬一体」とでも表現すべき感覚を味わえたことだ。
これほど万能なフレームに乗ったのは初めてかもしれない。
オフロードのコーナリングではフレーム性能が如実に現れるが、このBREEDは様々な状況下でのコーナリングでも不安を感じさせなかった。
空気圧さえ適正にセッティングすれば、その安定性は一級品で、どのような場面でも安心して攻められる。その性能には驚きを隠せなかった。

私の理想的な走りを実現してくれるBREEDの実力は計り知れない。
2ヶ月間乗り込んで見えた魅力を語ってきたが、これからさらに距離を重ね、時間をかけてこのバイクと向き合い、新たな発見を積み重ねていきたいと思う。
この先もBREEDがどんな景色を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。
このインプレを書いた人
岸 崇仁(きし たかひと)
国内トップチームでの戦績を持つ元プロ選手。現在はサイクリングコーチやガイドを務め、プロダクトからフィジカルまで幅広い知見で自転車の楽しみ方を発信している。