ゴッセにとって、サイクリングとは常に “数字” と向き合う世界だった。
シクロクロス世界ランキングで2年連続トップ30入り。オランダ代表として世界選手権にも何度も出場。
誰が見ても「成功したプロサイクリスト」のキャリアを持っている。
けれど――
その次の一歩は、どこへ向かうのか?
目次
■ 2016年、ベルリンでの出会い
僕たちが初めてゴッセと出会ったのは2016年。
ベルリンで開催した Singlespeed Cyclocross European Championships(SSCXEC)。
彼はそこで優勝し、初対面なのにその空気感に一瞬で惹きつけられた。
当時の彼はまだ世界ランキング上位というわけではなかった。
けれど、彼が「プロチームを辞めた理由」を聞いた瞬間、すべて腑に落ちた。
“レースの選択まで管理するチームにはいたくなかった。
自分が出たいレースを走りたい。それだけだ。”
その中には、もちろん「シングルスピードCX欧州選手権」も含まれていた。
ゴッセは、僕たちと同じだった。
数字より、肩書きより――
“なぜ自転車を愛しているのか” を大切にする人。
■ 巨大チームのバスに、1台のカングーで挑む
その後、僕たちは一緒に世界中のUCIレースに参戦した。
完全なサポート体制があるわけじゃない。
プロチームにあるような巨大なチームバスなんてもちろんない。
ゴッセは毎週末、荷物をパンパンに積んだカングーで会場へ向かった。
そしてビッグネームたちの中に混じり、
ワールドカップでトップ50入りを何度も果たした。
それでも彼は決して “刃を噛みしめて走るタイプ” ではない。
どんな時も自転車を楽しむ気持ちを失わず、
周囲のレーサーたちの張りつめた空気を、
ふっと緩めてくれる存在だった。
僕たちより約20歳も若いのに、誰よりも深い友情を築いてくれた。
プロであっても変わらない。
旅するように走る他のライダーとも同じ感性を持っていた。
■ 競技の“次”にあるもの
ただ、歳を重ねると毎日の鍛錬は簡単じゃなくなる。
学業との両立もあった。
徐々に「次のステージ」が現実味を帯びてくる。
でも、だからといって――
ゴッセは走るのをやめない。
たとえ若手のスピードに太刀打ちできなくても、
楽しむために走ることを、手放すつもりはない。
■ 次の答えは、“グラベル”じゃなく“冒険”
プロ引退後の選択肢として多くの選手が選ぶのがグラベルレースだが、
彼にはしっくりこなかったし、僕たちも「それだ」とは思わなかった。
そこで僕たちは決めた。
“ゴッセをバイクパッキングに連れ出そう。”
重いバイク。星空の下で寝る。川での野営。
そんな “スローな旅” が、彼にはむしろ似合う気がした。
そして案の定、彼は誘った瞬間に大興奮した。
■ ベネト・トレイルで見つけた新しい自由
向かったのはイタリア・ヴェネト地方。
絶景が続く「Veneto Trail」。
ゴッセの“オランダ流キャンプ術”は、
想像以上に旅を豊かにしてくれた。
この旅で撮影した映像は、
1月4日のヴェネト・トレイルのエントリー開始日に合わせて公開予定。
もし、
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元プロがバイクパッキングでどう走るのか見たい
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Veneto Trail に興味がある
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ただ旅の映像が好き
そんな人は、ぜひYouTubeのベルを押してほしい。
その通知が、僕たちにとって何よりの励みになる。
この作品は、きっとあなたにも刺さるはずだ。
僕たちがそうだったように。
ゴッセの“かつての人生”を振り返るエピソードはこちら



