アメリカナショナルチーム FELT トラックレーサー ジェニファー・バレンテ インタビュー

先に行われた東京大会の自転車トラック競技でひと際強い存在感を放ち、特に最終日の女子オムニアムでは第4種目のポイントレースで落車に見舞われつつも黄金のメダルを勝ち取ったアメリカナショナルチームの一員であるジェニファー・バレンテ。

 

競技のため来日する前にバイクパートナーであるFELT Bicyclesが彼女へ向けたインタビューからその人柄に迫ります。


FELT:ジェニファー、あなたはどこの育ちでいつから自転車に乗り始めましたか?

 

ジェニファー:私はカリフォルニア州のサンディエゴで育ちました。父がロードレースをしていて、珍しくも近くにベロドロームがある場所に住んでいたので私も兄弟も物心ついたころには身の回りに自転車がありました。サンディエゴのベロドロームのキッズクラスには、10歳か11歳の頃から参加して、13か14の時には本格的にバイクレースを始めていました。トラックレースのあとロードレースも始めて地元のクリテリウムに参加したりもしましたが、私はトラックのほうが性に合っていたようで、気づいたらアメリカ各地のベロドロームをまわるようになっていました。

中学のころにジュニアワールドチームに参加したことが私の転機となり、それ以来トラック競技に集中してUSAサイクリングのトップチーム入りを目指すようになりました。おそらく2011年のジュニアワールドカップの際に自分の適性はトラック競技にあるとより確信を深めたように思います。

 

FELT:あなたはTWENTY24プロサイクリングチームにレーサーとして所属していますが、チーム入りの経緯は?

 

ジェニファー:私がチーム入りしたのは2012年の頃でした。その時はまだチームは今の名前ではなかったけれど。当時チームはジュニアライダーの育成プログラムに特に力を入れていました。当時から私は世界最高峰の自転車レースの数々で活躍したいと考えていましたが、ジュニア大会に出るようになってチーム所属のトラックライダー達数人といい感じになったんです。それ以来、トラック・ロードのエリートライダーとしてチームに所属させてもらっています。

 

FELT:去年、東京大会が延期になると聞いたときどのように感じたか教えてください。

 

ジェニファー:自分の記憶でしか語れませんが、最初はいろんな噂が飛び交っていて、反面、確実な情報はなかなか入ってこないのでやきもきしていた覚えがあります。その後本部から正式にメール連絡が届いたのですが、その時には自分の頭の中には考えられうる「もしも」のシナリオが揃っていたように思います。

連絡を受けたのはベルリンの2020世界選手権の後だったでしょうか。レースから飛行機で帰国したら国中がロックダウンで大変な状況でした。当然、東京もこれらの影響を受けるであろうという予測は方々から聞こえてきましたし、事実、影響なくイベントが実施されるとはとても考えにくい状況でした。東京の延期が正式に決定したとき、私たちはすぐに新しい計画を立て、それらの計画変更がどのように従来スケジュールに影響を与えるのかを判断しました。そして一日一日を大切に過ごすことにしたのです。

FELT:あなたは、UCI世界選手権や2016年のリオ大会など、トラックレースで多くの経験と成功を収めてきました。トレーニングや準備の面では、東京のようなイベントへの取り組み方は、夏の重要な大会がないシーズンとは異なるのでしょうか?

 

ジェニファー: 夏の東京大会に関して言えば、トラック競技はロードレースや他のスポーツとは少し違うかもしれません。というのも、トラック競技にとって東京大会は、必ずしも自転車競技に興味がない人たちにも、私たちのニッチなスポーツを知ってもらう最大の機会になるからです。また自転車愛好家で自転車競技の熱狂的なファンの方々であってもトラック競技やその選手、魅力に関してはよく知らないという人もたくさんいます。

だからこそ、あれらの大会を中心にすべてが動いていくことになり、計画、焦点、トレーニング、そしてすべてのエネルギーがこの4年サイクルに注がれることになります。今年の夏の東京大会の場合は5年です。サイクルが定まっているわけですから、競技への取り組み方はあまり変わりありません。毎年、UCI世界選手権がありますが、ほとんどの場合、トラックプログラムは4年サイクルで作られています。

 

FELT:あなたは、チームパシュート、オムニアム、マディソンの各種目に選ばれました。どの競技に出場するのが一番楽しみですか?

 

ジェニファー:私はマススタートのレースが大好きです。ジュニアの頃、サンディエゴで火曜日の夜にマススタートのレースに参加していました。オムニアムは、さまざまなタイプのマス・スタート競技で構成されています。自分の原点であり、ずっと好きだった場所なので、そこで何ができるのか楽しみにしています。しかし、チームパシュートも常に特別なものです。ここ数年と同様に、今年も素晴らしいメンバーが揃っています。勝利に貪欲で、強くて、結束も固いチームなので出場するのが楽しみです。

 

FELT : あなたは、2016年のリオで2位になったアメリカのチームパシュートチームの一員でした。東京に向けて、今回のチームパシュートの成功は、あなたとチームにとってどのようなものになるでしょうか?

 

ジェニファー:成功の定義は、人によって違うと思います。特に東京のような大きな大会では、チーム競技の場合、目標や優先順位、達成しようとしていることについて、全員が同じ考えを持っていなければなりません。パンデミックはもしかしたら「成功」とは何か、目標とは何かを再定義させるだけの影響を社会全体に与えたかもしれませんね。

でも、世界最大の大会ですから、アスリートとしてはもちろんリオでの成果を超えたいと思っています。目標は常に、以前よりも良くなることであり、自分自身の中で向上し続けることです。他の国の動きをコントロールすることはできませんし、優勝するためにはどのくらいのタイムが必要なのかなど、さまざまな憶測が飛び交っていますが、そんなことは置いておいて、私たちの計画はトレーニングでも大会でも、常にこれまでよりも良い結果を出すことです。

FELT:あなたの2台のトラックバイク、パシュート用 TA FRDとマススタート用 TK FRDについて教えてください。

 

ジェニファー:TA FRDは2016年のリオの大会前に発表されたもので、2016年からは唯一のパシュートバイクとして乗っています。だからバイクのライディングポジションにとても馴染んでいて、人車一体の速さを感じています。でも、初めて乗ったときのことはよく覚えています。他のバイクから乗り換えて最初にあのバイクに乗るときは、どれだけ劇的に違うかをはっきり体感することができますから。バイクは非常にナローでアシンメトリーに形作られ、左に速く曲がるように設計されています。初めて乗ったときの衝撃は大きかったですね。新しい感覚に慣れることと、自分の足元にあるものや乗り方に慣れることが必要でした。5年間このマシンに慣れ親しんできたので、さすがにその衝撃も少し薄れてきましたけどね。(笑)

マススタートイベント用の新しいTK FRDに関して言えば、2019年の秋に初めて乗ったのですが、それまで乗っていた先代のFeltバイクとは大きく違う進化を遂げた機材でした。TA FRDと同様に、TK FRDも初めて乗った瞬間に明らかな性能の向上を体感しましたが、1回の競技ですぐに自分の手足のように操れるほどの扱いやすさも感じました。この1年間に起こった様々な出来事は不確実性を感じさせるものでしたが、信頼できる心の拠り所を持つことは自分のメンタルにとって本当に重要だったと思います。私たちのチームの機材は、すべてにおいて頼りになるもののひとつです。毎回、フェルトのバイク(TA FRDとTK FRD)が頼りになることはわかっています。

 

FELT:最後に、自転車競技の中で、トラックレースがユニークでエキサイティングな理由は何ですか?

 

ジェニファー:トラックレースの醍醐味はいくつかあります。最大の特徴は、観客として観るのが楽しいということです。目の前ですべてのアクションと戦術が見られ、常に多くのことが起こっています。例えばロードレースでは、時間的にも地理的にもコース上に散らばっているため、観客としてはいま行われている戦術がどれほど重要かを理解するのが難しいと思います。カメラに映るものもあれば、映らないものもあり、実際にレースを見ていないとわからないことがたくさんあるのです。トラックレースであれば、レースを見ている間にそれらの要素を簡単に見つけ出すことができます。そしてそれぞれのライダーが自分のカードを使おうとしている様子を見ることは、皆さんにとって非常にエキサイティングなことなのではないでしょうか。

また、チームパシュートがエキサイティングなのは、チームスポーツの中でも数少ない、真の意味でのチーム競技だからだと思っています。ロードレースのように、個のチームメイトの勝利のために走るのとは違い、全員が同じ努力をして大会を完走し、一緒に表彰台に立つことができるのです。一人一人の能力を最大限に発揮できるというのは、本当に特別なことだと思います。お互いのことを知れば知るほど、自分の強みと弱みを知るほど、お互いに正直に話し合って、それぞれの強みを最大限に生かすための最適なプランを考えなければなりません。だからこそ、自転車競技における究極のチームイベントと言えるのです。

ジェニファー・バレンテ インタビュー原文

FELT TK FRD 日本公式Webページ

 

 

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