Bombtrack Audax インプレッション | 山形・福島キャンプツーリング

日常が決して嫌いなわけじゃない。だけど人生には非日常が必要だ。今年のキャンプツーリングは山形・福島に行くことにした。

 

Day 1

今回はボムトラック・オーダックスと行く初めてのキャンプツーリングだった。

Audaxというのはブルベのことだが、頑丈なクロモリフレームに650x47Cのワイドタイヤというスペックで、日本のブルベでイメージする自転車とは大きくギャップがある。

新幹線輪行で辿り着いた米沢駅を出発し、市街地からゆっくりとペダルを漕ぎ出す。

グイグイ進んでくれるというよりは久しぶりの旅に早る気持ちを落ち着けてくれるようなツーリングバイクらしいフィーリングをオーダックスは持っている。

フレームチューブの太さはクラシカルなクロモリフレームより太く、実際に走らせると頼もしさを感じる。

ダウンチューブの太さは35.5mm。昔ながらのクロモリフレームは28.6mmで、ボムトラックのグラベルバイクであるフックEXTだと42.3mm。まさにその間をとったバランスの良いフレームだ。

テントや寝袋をフル装備したのは初めてだったが、最初から積んでましたよ、と言わんばかりの安定感は流石。キャンプ装備を積んだ時にありがちなフォークがブルブルするなんてことはもちろん無い。

今日は県境を超えて向こう側にある野営場泊の予定だ。水場も無いということなのでワイルドなキャンプになりそうだ。あわよくばグラベルも探したいと思っているが、最近は崖崩れなどによる通行止めが多いのでどうなるだろう?

市街地を抜けて田舎ならではの広い道を山に向かう。既に気持ち良すぎてこの一年で貯めてしまった色々が身体からふわふわと蒸発して、クリーンな自分になっていることを感じる。

道も知らなければ、先に見える山のシルエットも知らない。知らない土地でどんな景色が待っているのか期待が高まる。私にとってキャンツーほど心をリセットするものはないようだ。

途中、グラベルがあるかもと睨んでいた道をいくつかチェックするが、どこも通行止めの看板が立っていたのは残念だった。

ダムを通過していよいよ県境を超える本格的な登りだ。…というところでまたも「この先、通行止め」の看板。

まさか…ここが通れないとなると予定していた場所でのキャンプは無理だし、向こう側に抜けるためには米沢まで戻らなくてはいけない。

かなり迷ったが、ちょうど目の前にキャンプ場があったので早めにテントを張ってゆっくりすることにした。幸い天気は最高なので気持ちよく昼寝をむさぼった。

キャンプツーリングは予定通りにいかない。だからこそ非日常なんだと思う。

Day 2

今日は当初の予定を変更して、米沢から真っ直ぐ南下して猪苗代湖に至るルートを取ることにした。まずは米沢方面に戻るが、少しでも昨日と違うルートがあれば積極的にそちらを選択する。

GoogleMapでかなり拡大しないと表示されないが、確実に丘の向こう側に通じる林道を見つけた。こういう道がグラベルだったりする。

実際にはグラベルじゃなかったが、木漏れ日が射し込む良い雰囲気の林道だ。

と、ピークを超えたところでグラベルが現れた。

かなり荒れてるけどグラベルの振動が自らに纏わりついた埃を振り払ってくれる気がする。やっぱり初見のグラベルには高揚感がある。

グラべルの丘を降りると秋の田園。黄金色に輝く稲穂に癒やされるのは日本人のDNAなのか?

途中でクラシカルなランドナーとすれ違った。そうだ、オーダックスは現代の高性能ランドナーなんじゃないか。大量の荷物を許容し、安定志向のハンドリング。

ランドナー全盛期はまだ未舗装路も少なくなかった時代。基本はオンロードだが、ボリュームのあるタイヤはダートを走ることも想定している。その歩みはスパスパ軽快というわけではないが、ジワジワと確実だ。

そんなことを考えながら目指すは西吾妻スカイバレー…ではなく、その西側に細く線が描かれた旧会津街道の新檜原峠。

かなり荒れている可能性が高いが、最悪押し歩く、ダメなら少し引き返してスカイバレーに合流すればいいという算段だ。

ツーリングにはセットとも言える巨大なダムを横目に眺めながら登り基調を進む。

途中、新檜原峠が通れない場合のエスケープルートを確認するが、ゲートが閉まっていた。一抹の不安を覚えるが、まあ新檜原峠が通れれば問題は無い。そして新檜原峠の入口であり、古の街道筋の雰囲気をかろうじて残す綱木という集落に辿り着いたが、集落をゆっくりと進んだ先に待っていた光景には呆然としてしまった。

道が無い!舗装が途絶えた瞬間に草が生い茂りすぎて、道が進む先が判別できないのだ。

日没までそう余裕があるわけではなく、最悪の場合、遭難する可能性もあり得るので、先人に思いを馳せつつ引き返すことにした。

エスケープルートも使えないので、10km以上戻って下からスカイバレーをやり直す。このスカイバレー、景観の良いなかなか迫力のある道なのだが、如何せん傾斜がきつい。

キャンツー装備には堪えるが、なんとか峠を超えた。そしてオーダックスでのダウンヒルはまさにご褒美。ボリューミーなタイヤはまったく滑る気がしない。重くなった身体でもバイクに身を委ねて、しかも結構なスピードで標高を下げていく。桧原湖を抜け、磐梯山を横目に見ながら、猪苗代湖の手前まで辿り着いた。

予定していた会津若松との間の小山に位置する景色の良さそうなキャンプ場は既に受付時間終了。

ここは次回のお楽しみにして、湖南のキャンプ場を目指してナイトライドすることにした。子どもが生まれてからナイトライドをする機会はほぼなくなり、しかも知らない土地となるとかなり久しぶりだ。

夜闇を駆ける高揚感と、少しの不安感はやっぱり特別。無事にキャンプ場に辿り着いてパスタとビールを流し込み一瞬で眠りに落ちた。

 

Day 3

キャンプツーリングの朝は早い。見知らぬ土地の早朝の空気もまた格別だ。今日で旅は終わりだけど、メインディッシュのグラベルが待っている。まずは布引高原までのヒルクライム。淡々とペダルを踏んで登っていくが、熊出没注意の看板がしつこいくらい設置されている。これだけあるということは本当に出るんだろう…不安が頭をもたげる。しかし今は進むしか無い。

頭を空っぽにして登り続けると視界が開け、風車が現れた。眼下にはさっきまでいたはずの猪苗代湖も望むことができる。頂上も例に漏れず熊出没の看板があるので長居せず、目的のものを探す。GoogleMapに表示されないくらいだから、さすがに入口も分かりにくい。

そう、待ち望んだグラベルだ。

オーダックスのフワフワとしたタイヤを期待にフワフワした心で転がしたその先は想像より走りやすい道だった。未見のグラベルが持つこのワクワク感たら無い。

始めこそ走りやすかったものの、道は徐々に荒れ、こぶし大の石がゴロゴロするダウンヒルに変わった。しかしオーダックスは安定したハンドリングで狙ったラインに進んでくれるので不安は無い。グラベルの振動が気持ちよくてまた溶けそうになった。

昨日浮かんだ現代のランドナーというワードに改めて納得する。オーダックスは基本はオンロード志向なはず。だけど妙にワイドなタイヤを履いているなと思っていた。でも意図しているのはまさにこういうシチュエーションなのかと合点がいった。

グラべルから舗装路に出た時の安堵感たるや。

道の駅で昼食を済ませて、次のグラベル林道を目指す。途中、別荘地の中を通るが、何故か20%が3kmほど続く登り。こんな時、オーダックスは軽々と登ってくれるということは残念ながら無い。

でもふらつかない安定感と軽いギアで、確実に進んでくれる。じっくりと進むその様はまさに旅をしてるという実感を湧かす。この自転車にサイクルコンピューターは似合わないかもしれない。

なんとか林道入口に辿り着いたが、またしても通り抜け不可の看板。

かなり残念だが、大人しく引き返して舗装路で新白河駅を目指すことにした。真っ直ぐに引かれた道で旅の終わりを噛み締める。旅は予定通りに行かない。でも軌道修正して進む。それって旅だけじゃないよねと思いながら改札を抜けた。

オーダックス製品ページ

 

 

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