Garminから新たに登場したサイクルコンピューター「Edge MTB」。その名の通り、MTB(マウンテンバイク)専用モデルとして登場したこの新型Edgeですが、注目すべきは「5Hz高精度GPS記録」と「タイミングゲート機能」という、従来モデルにはなかった新機能の搭載です。
本記事では、あえてこのEdge MTBをロードバイクで使ってみることで、その性能や活用の可能性を探ってみました。主な検証ポイントは以下の2点です:
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高速・高密度なGPS記録がどれほど走行ラインを正確にトレースできるのか
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「タイミングゲート」機能がロード系競技にどう活かせるか
それでは行ってみましょう!
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Edge MTBの基本スペックと操作感
まずはEdge MTBの基本スペック。シリーズの中でも最軽量級のコンパクトな筐体(58g)に、2.13インチの非タッチディスプレイを搭載。操作は物理ボタン式で、手袋をしていても確実に扱える安心感があります。IPX7の防水性能に加え、MTBの過酷な環境を想定した頑丈な構造が魅力です。
この筐体の基本スペックだけでもロードユーザーにもメリットがあるように思います。現状、シリーズ最軽量の130Plusは液晶がモノクロなのでその点でもEdge MTBは軽量サイコンとして圧倒的に見やすいです。画面もゴリラガラス®、物理ボタンはラバーシール構造で防塵性や耐衝撃性もばっちりです。1gの重量を気にするヒルクライマーにも良いですし、振動や衝撃の多いシクロクロスやグラベル、クリテリウムなどではむしろこの耐久性が活きてくると感じました。



注目の新機能
●5Hz計測機能について
今回のEDGE MTBの大きなセールスポイントの一つ、5Hz高精度ログ計測について簡単に解説します。
従来のサイクルコンピューターは1Hzでの測位でルートを書き出していました。1Hz での測位とは、秒間1回の位置情報の取得という意味です。これが5Hzの高精度測位となると秒間5回の情報取得をすることで、より正確なルートログを記録できます。
これはGarmin社の資料からの引用ですが、1Hzは少ない計測ポイントを線で結ぶようにルートログを残す一方、5Hzは計測ポイントの多さからより詳細なカーブのログを残せているのが分かります。特にMTBのダウンヒル競技などはルート取りが大きく勝敗を分けてくるため、今回のモデルで採用されたのだと思います。但し、注意点としては2025/7/10現在、この機能はMTBダウンヒル/MTBエンデューロモードでの下降時でしか有効になりません。
●タイミングゲート機能について
もう一つ、今回注目のタイミングゲート機能。これは任意のコースを自由に最大10個のポイントを設けて各コーススプリット毎でタイム計測ができるという機能です。Garminのコース上へのデータオーバーレイ機能も合わさって、コースの内、どの部分でスピードが詰まっている、なども一目で確認できます。
どちらもGarmin が総力を挙げて「MTBにもGarminを!」と導入したかなり力の入った新機能だと思います。実際に富士見パノラマリゾートのような定型コースに持ち込んで、タイミングゲートを設置して5Hzモードでタイムアタックを重ねたらかなり楽しそうです。MTBライダーが使ったら幸せになれるのは疑いないと思います。
ただ、どちらかと言えば筆者はロードユーザー。GarminJapan社員さんが言っていたロードの人にもかなりおすすめですという言葉の真偽、ぜひとも確かめてみたい…!!卸の立場ではありますが、忖度無しに行きましょう。検証スタートです!
検証条件
検証1.:Edge MTBとEdge 530を同じコースで走らせての比較検証!
主に乗る人: I / 第一子が生まれててんてこ舞いなロードバイクユーザー。実力はさておき、速い自転車が好き! 身長 170㎝ 体重60㎏
主にEdgeMTBを搭載する機材:FELT FR4.0 Advanced Ultegra Di2
検証2.:Edge MTBのタイミングゲート機能を使ってみる!
主に乗る人: Y /スポーツバイクの川下から川上まで広くソコソコ深く楽しみたい欲張りサイクリスト。第三子誕生による収納問題につき、現在はグラベルバイク1台でゆるポタから時にロードバイクと並んで朝練を楽しんでます! 身長172cm 体重72㎏
主にEdgeMTBを搭載する機材: BOMBTRACK AUDUX
1.5Hz計測との差の検証
まずは5Hz計測がどの程度ロードライドで威力を発揮するのかを検証。現状ではMTBダウンヒルまたはMTBエンデューロモードでしか5Hz計測は有効にならないため、ロードバイクでの峠の下りをMTBダウンヒルモードで計測してみました。
んー…?? いまいち違いが判然としない結果となりました。
もともと1Hz計測とはいえ、他GPSメーカーと比べかなり正確な測位をしていたGarminEDGEシリーズ。ロードライドには現状の計測精度で十分なのかもしれません。もしくは通常のロードライドでMTBダウンヒルモードを使った結果、5Hz計測がうまく起動していなかった可能性も多分にありそうです。もう少しこの部分での違いを検証するにはもっと山深いグラベルライドで検証する、あるいはMTBコースにEdge MTBと他のシリーズを一緒に持ち込むなどしてみないと何とも言えなさそうです。
いずれにしてもシクロクロスやグラベルライドなどでは5Hz計測の利点は大きそうですが、現状ではMTBダウンヒル/MTBエンデューロモードの下りでしか起動しない機能なので純ロードユーザーとしてはこの機能に求めるところは多くはなさそうです。今後のアップデートに期待ですが、オフロード要素を含む人向けの機能ではありそうですね。
余談ですが、今回MTBモードでデータを取っているためMTBダイナミクスを確認できました。(舗装路でのデータですが…)下のような形でMTBモードでしか見ることのできない指標も確認できるので、「Garmin導入してみるか―…?」というMTBライダー様はこういうデータも見れるくらいで参考にしてください。
フロー:マウンテンバイクライドでスピードをどの程度維持できたかを測定。ライド全体で登り降りやカーブの角度などの要因が考慮される。
グリット:マウンテンバイクライドの難易度を測定。ライド全体で登り降りのスピードやカーブの角度などの要因が考慮される。
2.タイミングゲート機能の検証
どちらかと言えば、こちらが楽しみでした!
タイミングゲートの設置は今のところ実際の現地コースでポイント毎に設置していくしかないようです。設置の様子はこちら。
タイミングゲートを開いて、スタートゲートを設置したら、切り分けたいポイント毎にラップボタンを長押しします。タイミングゲートシリーズに名前を付けて保存したら完了です。
都内、本社近くで周回コースを設定、実際に試してみました。ラップごとにタイミングゲート毎のタイムも以下のように計測できます。
任意のコース内でポイント毎に切り分けるこの機能、かなり面白いのではないでしょうか!セクション毎のタイム比較もできて、コース内の自分の得手不得手やその時々の状況の変化の振り返りなどにも役立ちそうです。
使い方としてパッと思いつくのはサーキットなどの周回レースやシクロクロスなどの試走時にタイミングゲートを設定しておいて、レース実走データをラップごとに振り返る、などでしょうか。あわせてパワーデータのオーバーレイやルートログなどを読み解いていけば、ここの登りで掛けるタイミングが遅かった、第一コーナーへの入りが悪かった、など、かなり多角的に分析ができそうです。
EDGE MTBの注意点
目新しい新機能が満載のEDGE MTBですが、注意点もいくつかあります。
- 前述のとおり、5Hz計測は現在一部のMTBモードでのみ使用可能
- 操作インターフェーズは物理ボタンのみ
- POI(Point of Interest)ルートナビゲーションはない
- 新機能の追加の代わりに、Edge540以上に実装されているリアルタイムスタミナなどの一部機能は無し
- 5Hzモードでは最大14時間、バッテリー節約モードで最大26時間と短くはないが、長くもないバッテリー寿命
上記諸々を考えると、長距離を長い時間をかけて走るロング/ブルべ系ライダーはハマらないかな、というのが個人的な見解です。
まとめ
Edge MTBをおすすめしたい人
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MTBライダー(特にダウンヒル/エンデューロ)
5 Hz高精度ログとタイミングゲートの真価を最も引き出せる本来のターゲット。定型コースでのライン取り検証やセクション別アタックに最適。 -
周回レースに出るロード/シクロクロスライダー
タイミングゲートで各セクションのパフォーマンス比較が簡単。短周回・テクニカルなコースほど効果大。 -
ヒルクライマーや軽量重視派
シリーズ屈指の軽さ(58 g)と視認性の高い画面。130 Plusより見やすく、540/840より軽量。 -
荒れた路面でも安心して使いたい人
ラバーシールの物理ボタンと堅牢ボディで、グラベル・CX・クリテなど振動が多い状況にも強い。
あまりおすすめしないかもしれない人
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ロングライド/ブルベ派 – 14〜26 hのバッテリーでは超長距離には物足りない。
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ナビ機能を最優先する人 – POI検索・オートルート生成は非搭載。
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高度トレーニング分析を求める人 – リアルタイムスタミナなど一部機能は未対応。
Garmin Edge MTBは、その名前から“MTBライダー専用機”と見られがちですが、実際に使ってみるとロード・CX・グラベルといったジャンルでも活用の幅は広いと感じました。
正直、5Hz記録はロードではそこまで大きな違いを体感できませんでしたが、それを補って余りあるのがタイミングゲート機能。
レース中のセクションごとの振り返りや、トレーニングの中での“動きの変化”を定点観測できるこの仕組みは、今までにない視点で走りを分析したいユーザーにとって新しい可能性をもたらしてくれます。
Edge 840や1040とは違う、“尖った道具”としての魅力を持つEdge MTB。
ハマる人にはとことん刺さる、そんなユニークな一台になること間違いありません。
関連リンク
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Garmin Edge MTB 製品ページ(Garmin公式サイト)
→ 製品仕様・価格・パッケージ内容などの詳細はこちら -
Garmin サイクリングシリーズ 製品ページ
→ Edge MTBと他モデルとの違いを比較したい方はこちら -
Garmin サポートページ(Edge MTB Q&A・ソフトウェア情報など)
→ 使い方で困ったらまずチェック