自転車のガジェットを手に取ると必ずと言っていいほど目にするIPXなどの防水等級。
なんとなく、数字が高い方が防水性能が高いんだろうなぁ…。などと、漠然と眺めているのではないでしょうか。
さらにはIPX、ではなく、IP規格??
このブログではスペック上ではやたら主張してくるのに、実際には誰も教えてくれない防水等級について解説していきます。
目次 [hide]
IPXについて
IPXとは?
IPX(International Protection)防水規格は、IEC(国際電気標準会議)によって定められた電子機器の防水性能を評価する規格です。「IPX4」などのように表示されます。
IPX 各種等級
それでは各種等級について解説します。IECは各等級を設定する際にどのようなストレステストを課して尚、製品として作動するのかを設定しており、それに応じたIPコードを振っています。0~7まであり、基本的には数字が大きいほど防水性能が高いです。
全体でのイメージはこんな感じです。
IPX0 : 防水性なし
-
定義:一切の防水保護がされていない。
-
想定例:完全に屋内使用前提の機器。水がかかったら壊れるリスクあり。
IPX1:鉛直に落ちてくる水滴に対して保護
-
試験条件:上から垂直に1mm/分の水滴を10分間落下。
-
耐えられるシーン:少量の水滴(軽い結露やミスト程度)。
-
例:ごく軽い室内使用の機器など。
IPX2:15°まで傾斜した状態での水滴に耐える
-
試験条件:本体を各方向に15°傾けて水滴を10分ずつ。
-
耐えられるシーン:斜め方向からの水滴、少しの傾きでも耐えられる。
IPX0~IPX2までは生活防水という向きが強く、屋外アウトドアでの過酷な環境下が想定される製品ではあまり適切ではないと言えます。室内使用前提のオーディオ機器や、パルスオキシメーターなどといった家庭用医療電子機器といった製品に採用されている場合が多いです。
IPX3:水をスプレーした際の保護(60°以内の角度からの水噴霧)
-
試験条件:上下60°以内から散水。水量は毎分0.7L、試験時間は10分。
-
耐えられるシーン:雨や軽いシャワーを浴びる程度。
-
例:屋外でも使えるタイプのイヤホンなど。
IPX4:あらゆる方向からの飛沫に耐える
-
試験条件:どの方向からでも水しぶきを受ける。毎分10Lの水で5分間。
-
耐えられるシーン:強い雨、シャワー中に触る程度。
屋外スポーツ用品でそのメリットとして防水性能を謳う場合は、多くはこの等級が目安となってきます。
サイクル用品では主にフロントライトや、セーフィティライトなどにこの等級が見られることが多いです。
IPX5:あらゆる方向からの「噴流水」に耐える
-
試験条件:直径6.3mmのノズルで毎分12.5Lの水を3mの距離から3分以上噴射。
-
耐えられるシーン:ジェット水流、アウトドアの強めの雨。
IPX6:あらゆる方向からの「強い噴流水」に耐える
-
試験条件:直径12.5mmノズル、毎分100Lの水を3分以上噴射。
-
耐えられるシーン:台風レベルの豪雨、激しい洗浄水。
IPX7:一時的な「水没」に耐える(最大1m、30分間)
-
試験条件:1mの深さに30分間沈める。
-
耐えられるシーン:水に落としてもすぐ拾えば大丈夫。
IPコード上、最も強い等級がこれら。サイクル用品では各種ハイエンドライト類の他、サイクルコンピューターや特殊な機能を持たせたヘルメットなどにも採用されています。大抵のアウトドア環境下における水害であれば、これらの等級で作られた製品は問題なく動きます。
余談ですが、メーカーによっては水中で使うことが前提の商品(例えば水中カメラなど)などにこれらの等級よりもさらに高いIPX8などといったグレードを表記しているものもあります。継続的に潜水した状態での使用を考慮し、IECの設定した試験とは異なるIPX7より厳しい基準のメーカー独自テストをパスした商品に付与されます。おそらくサイクリング用品ではあまり見かける機会はない等級ではないでしょうか。
IP2桁の等級について
IP××(IP規格)とは?
実はこれ、前述のIECによるIP(Internal Protection)規格と全く同じものです。ただ、IPXが防水性能のみを示すものであったのに対して、IP××は1桁目で防塵性能も表しています。
つまり、こういうイメージ。
製品のスペックを見ると、防塵性能を記載する場合は防水性能と併記する場合が多いようです。例えば「IP67」などと表記されるのですが、この場合の読み取り方としては、完全な防塵構造且つ一時的な水没にも耐える防水性能、と分かります。
IP×X 各種等級
以下より、防塵性の等級をご紹介します。
IP0X : 保護なし
IP1X : 手の甲程度の大きさ(直径50mm以上)の異物に対して保護
IP2X : 指(直径12.5mm以上)のようなものに対して保護
IP3X : 工具など(直径2.5mm以上)に対して保護
IP4X : ワイヤーなどの破片(直径1.0mm以上)に対して保護
IP5X : 粉塵の侵入は完全には防げないが、機器の正常動作に支障なし
IP6X : 完全な防塵構造。粉塵が一切内部に入らない
スペックを見ていてIP2桁の表記が出てきたらぜひ前述の防水等級と組み合わせて読み解いてみてください。自転車用ガジェットの特に耐久性という部分において、ご自身の欲しい性能がよりはっきりわかるかと思います。(大抵はIPXしか記載されていませんが…)
IP(X)記載商品ピックアップ
最後に、ライトウェイプロダクツジャパンで取り扱う自転車用デバイスの内、IP規格表記のあるものをいくつかご紹介します。
IPX4 編
自転車用品として防水性能を商品メリットとして記載する場合はやはり多くはこの等級がスタートの様です。
主に自転車のライト類を紐解いていくと多数該当の商品があります。サイクリング中、突然の雨に見舞われたり、グループライドの際に前走者の跳ね上げた水がかかったりなど、濡れる場面は容易に想像できるので、ある程度の防水性は求めたいですね。
BBB NANOSTRIKE 600 | BLS-161 ¥9,500 (税込¥10,450)
重量123gのコンパクトサイズながら、600ルーメンの大光量を1時間半持続できるのがお勧めのライト。またボデイーのアルミケーシングやバッテリーの電子制御機能が優れており、電池残量に関わらず光量を常に一定に出力できるのが強みです。
SERFAS SL-200 ¥3,300 (税込¥3,630)
200ルーメンの必要十分な明るさと、何よりも大きな特徴が単3型乾電池が使用可能なライト。
特に今はUSB充電式が主流で乾電池で作動するモデルが限られてきていますが、乾電池はコンビニなどでの入手性もよく、特に充電式ライトの作動時間を越えて走るような長距離系ライダー達にとってはまだまだ重宝する存在です。
IPX6編
台風などでの激しい雨でも耐える高い防水性能を誇る等級。実際にはそのような天気であればサイクリングは控えた方がもちろん良いですが…。
ライトウェイ取り扱い商品ではウィンカー(方向指示器)付きヘルメットという、一風変わった製品がこの防水等級に属していました。頭に被る、という雨天であれば最も濡れやすい場所に配置されるために高い防水性を持たせる必要があったのでしょう。
LUMOS ULTRA ¥22,000 (税込¥24,200)
ウィンカー&フロントライト機能を搭載したスマートヘルメット。単純に他の交通利用者への被視認性が高いだけではなく、後続の車へこちらの動きを知らせることができ、高い安全性を発揮します。特に都市部の通勤・通学で導入を検討したいアイテムです。
IPX7編
水没しても作動するというという最高レベルの防水性能等級です。ここまでの防水性が必要になる場面、筆者はなかなか想像つきませんが…(自転車ごと池ポチャですか?)
この等級に該当するデバイスはどれも所謂ハイエンドプロダクトです。相応に値段の張る商品ばかりではありますが、防水性能以外をとっても一級品レベルの性能を発揮してくれることは間違いありません。
Garmin EDGE 840 ¥78,000 (税込¥85,800)
いわずと知れたGPSサイコンの代表格。単純なサイクリングステータスの表示やログ取得だけではなく、POSルーティング、各種トレーニング統計など、世代を増すごとに多機能になっています。筆者最も注目の機能はパワーガイド。現在の自分の能力を基に、入力したコースをベストパフォーマンスで走り切るためのパワー目標を示してくれます。
ちなみにGarminサイクル製品については大体どれもIPX7でした。デバイスメーカーの面目躍如、ということでしょうか。
BBB SIGNAL PRO | BLS-168 ¥10,000 (税込¥11,000)
BBBで最も明るいリアライト。最大ルーメン250のデイフラッシュモードは明るい日中であっても確実に後続の車に存在を報せる被視認性を誇ります。また効果的にCOBLEDをライト面全体に配置することで後ろだけではなく横からも他の道路交通者から確認できます。簡単にライトを装着できるスマートストラップ、本体を押し付けるだけでOn/Offが可能なパワーボタン配置など多数の工夫が凝らされた傑作ライトです。
やはりIPX7相当ですので、水ポチャしても問題なく作動します。単純なリアライトとしての最上位性能を突き詰めたものが欲しい人にお勧めです。
IP規格が表す防水性能・防塵性能について、参考になりましたでしょうか。
是非この記事を読んだ皆様は、検討中の製品のスペックを見る際に注目してみてください。