FELT-フェルト FR4.0 インプレ|第4世代で何が変わった?実走レビューと乗り換えレポート

ブランドを「レース屋」と自認し、新たにFELTISFASTというブランドコピーの元、人力における速さとそこから来る楽しさを追求した商品を生み出し続けているFELT。

そんなFELTが考える、ロードバイクとしてもっとも加速性や瞬発性、高低差の激しいコースへの適応力に優れた自転車がFRです。

今回、筆者はなんと昨年デビューしたこのブランドにおける新たなアイコンとなる第4世代FELT FRを手にする機会に恵まれ、皆様のご参考にインプレしたいと思います。

やはり乗り物における一つのモデルを推し量っていく上では、その先代、先々代や源流となった車体から変遷をたどっていくのが一番解像度が高いです。

ブランドの歴史自体を振り返っていくため長文とはなりますが、お付き合いいただければ幸いです…!

 

FELTのそもそものブランドの起こり

ジムフェルト ロードバイク ブランド
ジム・フェルト、ブランドを立ち上げたその人。間違いなく今日までの自転車を作り上げてきた人の一人です。

FELT(フェルト)は、アメリカ・カリフォルニアで誕生したスポーツバイクブランドです。

元々は世界の有名バイクメーカーでモトクロスバイクのメカニックエンジニアをしていたジムフェルトがトレーニング用に自分のトライアスロンバイクを作り上げたのが始まりです。その自転車がEASTONの目に留まり、彼は様々なバイクブランドのフレームで使うためのEASTONチューブを作ることになります。様々な金属素材の配合やチューブ加工技術から、彼は業界内で「フレームの魔術師」と呼ばれました。

ポーラと試作バイク”B2”。トップチューブにはEASTONロゴもあります。

EASTONからトライアスロンで勝つバイクを作るプロジェクトを任されたジムはその当時特に有力であった女子選手、ポーラ・ニュービーフレイジャーとタッグを組みます。黒塗りのイーストン試作バイクはそのステルス戦闘機のような見た目からB2と名付けられ、その年のコナ・アイアンマン世界選手権を優勝。彼のバイクに乗りたいという人が多数現れ、FELTブランドの立ち上げに至りました。

当時のトライアスロン界で「とにかく速く、そして美しく」走れるバイクを目指したジムは、エアロダイナミクスと実戦性能を追求した設計を貫き、その哲学は現在もFELT全体に色濃く残っています。

 

ジム・フェルトのデザインしたレースバイク「F」

 

ジム・フェルトが設計したレースバイクの象徴が「Fシリーズ」でした。

カーボン素材をいち早く取り入れ、剛性と軽さを両立したフレーム設計、そして戦うためのジオメトリ。特に低いヘッドチューブと短く設計されたチェーンステーは、自転車にはじき出されたかのような加速感を生み出し、マニアの間で瞬く間に人気を博しました。Fシリーズはプロツアーでの活躍を視野に入れた、まさに「勝つためのロードバイク」でした。

ただ速いだけではなく、ライダーが意のままに操れるコントロール性も重視。これがFシリーズの根幹にある思想です。

 

FELT Fシリーズ第1世代

FELTのFシリーズが世に登場したのは2000年代。

プロチームへの供給を前提に開発され、ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスといった世界最高峰のレースで、その性能を証明してきました。

軽量性、剛性感、快適性、そして高い旋回性能。これらを高次元で融合させた「勝つためのピュアレーサー」。

特に特徴的だったのが、FELT独自の「SEMI COMPACT GEOMETRY(セミコンパクトジオメトリー)」と「アワーグラスシェイプ」。この2つの設計思想はライダーの出力を無駄なく推進力に変え、コーナリングでは安定かつシャープな動きを実現しつつ、剛性が必要な部分では肉厚を増し、逆に振動吸収が求められる部分は薄く設計することで、軽さと快適性を両立。レースバイクとしての性能を磨き上げるFELTならではのアプローチでした。

第1世代Fシリーズは、こうした設計哲学と実戦経験によって磨かれ、トッププロの脚を支え続けた、FELTの原点とも言えるモデルです。

実はこのFシリーズ第一世代、筆者も乗ったことがありました。当時最高峰の速いレースバイクであったことは間違いないのですが、それよりも乗り物としての挙動の素直さ、クセの無さをこの当時から感じた覚えがあります。ジオメトリ等を見ればバリバリの競技志向設計であることはすぐにわかるのですが、それでもFELTブランドは初期からその乗車感のニュートラルさには感じ入るものがありました。

ただ、それでもこの当時のカーボンバイクにある独特の「1枚挟んだ感覚」(後述します)があって、この時は自分はアルミのバイクでいいや、と考えていたようにも思います。金銭的に買えもしなかったですが(笑)

 

FELT Fシリーズ第2世代

第1世代で“勝つための武器”として確固たる評価を得たFシリーズは、2011年に第2世代へとアップデートされます。
開発テーマは「レーシング性能の更なる進化」。

BB30規格の採用によりBB周辺の剛性を強化し、ペダリング時のパワーロスを抑制。スプリントや登坂での加速性能が一段と向上しました。

ジオメトリは初代を踏襲しつつ、扱いやすさを磨き、FELTらしい「クセのない」乗り味をさらに洗練。
その中でも筆者が印象深いのは、この世代から採用された「Inside Outテクノロジー」です。

ポリウレタンコアを使って成型時の余剰樹脂を排除し、内部を完全に空洞化。
これにより軽量性・剛性・耐久性・快適性を高次元で両立。筆者が感じていた「1枚挟んだ感覚」も、この世代で払拭されました。今でこそ一般的な製法ですが、当時FELTが先駆けて導入した技術です。

第2世代Fはプロレースでも実績を重ね、「Argos-Shimano」がツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアでステージ優勝を獲得。
マルセル・キッテルが駆ったこのバイクは、思い通りに操れるハンドリング、高速域での安定性、スプリント時の剛性を高次元で両立し、“勝てるバイク”としての実力を証明しました。

一方で、非常に反応性が高く、ライダーの脚が売り切れると一気に進まなくなるスパルタンな特性もあり、筆者としては少々水が合わなかった記憶もあります。

 

第3世代、FELT FRシリーズのデビュー 〜“戦える万能機”への進化〜

マットテクストリーム

第2世代までの「Fシリーズ」は、プロレースで勝つための“ピュアレーサー”として評価されてきました。
しかし、時代とともにレース機材に求められる要素は変化し、FELTはその要請に応えるべく、2017第3世代でFシリーズをフルモデルチェンジ。新たに「FRシリーズ」として生まれ変わりました。

従来の「F」は、“瞬発力”や“剛性”に特化し、レースシーンで真価を発揮するモデルでしたが、より長いレース距離や路面状況の多様化、ライダー層の広がりに合わせて、速さだけでなく、扱いやすさ・快適性・万能性も求められるように。そこでFELTは、Fシリーズのアイデンティティを受け継ぎながら、幅広いシチュエーションで「速く、楽しく、最後まで踏み切れる」オールラウンドレーサーとしてFRシリーズを開発しました。

FELT独自のInside Out製により、フレーム内部の無駄を排除し軽量高剛性を実現。さらに、ディスクブレーキやスルーアクスルにも対応し、当時考えうる現代ロードバイクとしての完成度を高めていました。

特に設計上の特徴としてはリアステー形状による路面トラクションの向上によって、最後まで脚残りの良いレーサーとしての快適性を獲得します。ジオメトリーの面も当時アグレッシブすぎると言われていたFシリーズの設計から見直して、当時最新のポジション理論からレーサーとしての必要条件を満たしつつ若干ヘッドチューブを延長していました。

FRシリーズは、プロユースの性能を持ちながら、幅広いユーザーが安心して扱える“クセのない万能機”。Fシリーズの進化形として、多くのライダーに選ばれるモデルとなりました。

日本国内では特に弱虫ペダルサイクリングチームの使用機材として長く使用され、レーサーが使用機材に求める要求を高水準で満たすバイクであると認知されてきました。当時のチーム所属選手達によるインプレッションは多数ライトウェイオフィシャルブログへ残っていますので、お時間があればぜひご一読ください。(代表的なものをいくつか置いておきます。)

第4世代 FELT FR4.0 インプレッション

それでは、今回インプレッションするのが、最新の第4世代「FR4.0」。

筆者自身、第3世代FRからこのFR4.0に乗り換えて数ヶ月ほど経ちました。そこで実走から得た印象も踏まえながら、FELTの進化をお伝えします。

まずはインプレライダーとなる筆者の基本スペックを晒しておきたいと思います。

ライダースペック

身長:170㎝ / 体重 62㎏  以前のメインバイク:FELT FR 1 (リムブレーキ)

今回のインプレバイク : FR 4.0 Advanced Ultegra Di2 540㎜ ネイビースモーク

■ 先代FRの完成度とフェルトらしさ

思い返せば、先代の第3世代FRも当時のカーボンバイクと比べて非常に完成度が高いバイクでした。

エアロ性能こそ与えられていなかったものの、瞬間的な加速の鋭さ、リムブレーキ・機械式アルテグラ仕様で7.2kg以下という軽量性からくる登坂性能、トラクションの良さによる絶妙なリアバックのしなり感と脚残りの良さ——そして誰もが扱いやすいニュートラルな乗り味。

当時は「軽くて硬い」が正義とされていた時代。そんな中で、カーボンフレーム特有の“ワンクッション挟んだような感覚”や、脚が売り切れた後にまったく踏めなくなるネガティブな印象を感じることもありました。ですが、第3世代FRはそれを払拭し、カーボンバイクに対するイメージを大きく変えてくれた存在でした。

フェルトのバイクは「全体的に普通」という意見もありますが、むしろこれは各要素を高い次元でバランスさせた結果。突出したクセを感じさせないからこそ、多くのライダーにフィットするのだと思います。

■ 第4世代FR4.0の進化ポイント

 

そんな完成度の高かった第3世代FRをベースに、第4世代FR4.0はモデルコンセプトを崩さない範囲で、確実な進化を遂げています。

特に印象的だったのが「脚周りの剛性感」。フレーム全体がよりかっちりし、入力に対するレスポンスが向上。これにより、コーナーリング時の安定感も一段と増したと感じます。

というか、どんな踏み方をしてもガンガン進む。なんだこれ…! 人車一体感というのでしょうか、楽しい感覚を味わえます。

さらに、高速巡航時の伸びやかな走りも明確に進化。レイノルズ製ハイト高めのホイール、一体型ハンドルを含めたフルインテグレーション構造、そして細身になったバイクシルエットが相乗効果を発揮し、高速域での巡航性能を底上げしています。

一方で快適性については、先代同様、優れたトラクション性能をしっかり継承。28cタイヤが標準装備となった影響か、リアバックの剛性はやや高めかもしれませんが、路面追従性は健在です。

前作の良い所を全くスポイルすることなく現代レーサーに欲しい要素を取り入れながら、各性能をブラッシュアップしていったバイク ― それが今回の第4世代なのだと強く感じます。

■ 唯一のウィークポイントと今後の伸びしろ

唯一ネガティブに感じたのは、ディスクブレーキ化による車重増。やはりリムブレーキ仕様と比べると重さは感じます。

ただし、完成車パッケージの中身にはまだ軽量化の余地があるため、ホイールやシートポスト、クランクなどをカスタムしていけば十分に差は埋められます。また、最近のバイクは飛びぬけた軽さよりはトータルの走行性能を追求した物の方が他社製品含め多い現状を鑑みれば、必要以上に重量に着目しなくても良いのかもしれません。

総じて、FR4.0は「これぞFELT」と言える一体感の高いレーシングバイクに仕上がっており、乗るたびに完成度の高さを実感します。

正直、この完成度で「次はどこを進化させるのだろう」と思わせるほどの完成形に近い仕上がり。FELTらしさを残しつつ、現代的なエアロ性能と巡航性能を手に入れたFR4.0は、レースもロングライドも楽しみたい欲張りなライダーにぴったりの一台です。

まとめ・総評 〜FELT FR4.0はこんな人におすすめ〜

FELT FR4.0は、以下のようなライダーに特におすすめできる一台です。

■ こんな人におすすめ

  • レースもロングライドも一本でこなせる万能ロードを探している人

  • クイックすぎず、安定感もある「ニュートラル」ハンドリングを求める人

  • 踏んだ分だけしっかり進む、レスポンスの良いフレームを体感したい人

  • カスタム次第でさらに軽量化・自分好みに仕上げたい人

  • 見た目のシンプルさ、細身シルエットに惹かれる人

反対に、「とにかく尖った性能(超軽量・超エアロ・エンデュランス特化)」を求める人には、別モデルが適しているかもしれません。

しかし、レース機材としての完成度と、バイクとしての使いやすさ、そのバランス感覚において、FR4.0は「FELTらしさ」を体現した一台。万能性と完成度の高さを両立する優秀な選択肢となるでしょう。

■ 想定する用途

  • ロードレース(ヒルクライム、クリテリウム、ロードレース全般)

  • サンデーライドやグループライド

  • ややハイペースなロングライド

  • バイクカスタムベースとしての楽しみ

長くなりましたが、皆様のバイク選びの参考となれば幸いです。

> FELT FR プロダクトページ

 

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