幅広のラストと秀逸なフィット感が自分史上最高に気に入って2021年の国内販売スタートからずっと使い続けているFLRのシューズ。最近では、UAE team Emiratesのジェイ・ヴァイン選手がブエルタで山岳賞を獲得したことが記憶に新しいです。坂バカとしては、山岳が厳しいブエルタで山岳賞というのはテンション上がります。
そんなFLRのラインナップが刷新されました。新しいフラッグシップモデルとして登場したF-9は明確にアジアンフィットを打ち出した点がトピックス。実際に使用してインプレッションしていきます。
FLR F-9 フラッグシップロードシューズ
ニットアッパーのフラッグシップモデルFNT-9に対して、マイクロファイバーアッパーのフラッグシップモデルです。
アッパーはつなぎ目がヒールの一箇所しかないワンピースの軽量マイクロファイバー。余計な縫い目や接着部分が無いので、履いた時にあたる箇所が無く、軽量に仕上げることが可能です。
そこにパンチングホール のみが配されたスタイルは非常にクリーンです。
クロージャーはatopダイヤル×2個。2個なのでしっかり締め付けができます。atopダイヤルはboaに比べるとマイナーですが、緩める動作がしやすい点が私は気に入っています。
タンの上部は柔らかい素材に切り替えられており足首へのストレスを軽減します。
踵の内側は少しザラっとした素材に変更されていて踵の固定力を強化しています。使い込んでみないと確かなことは言えませんが耐久性も上がっていそうです。
踵には反射素材。追突から自分を守るためにはこういった対策は大事です。
フルカーボンソールはもちろんプロライダーのパワーに対応できる高剛性なのですが、固すぎる感覚は無いペダリングしやすい剛性感に仕上がっていると感じます。クリート取り付け部は滑り止め加工されています
つま先にはベンチレーションホールと歩行時に活躍するゴム。
踵側にもゴムが配されています。硬質なゴムなためか、3年間履き続けたFLRシューズでもこのゴムは意外と減っておらず、つま先側ゴムとともに私は絶大な信頼を置いています。
厚さが異なる2種類のインソールが付属していました。※将来的にはユーザーのフィードバック次第でどちらか1セットのみ付属とする可能性があるそうです。薄い方は従来品と同様の約4mm厚。厚い方はかかと部分にウレタンが追加されており、最も厚い部分で約10mm厚。くるぶしの高さ、もしくは踵の形状によって、フィット感をカスタマイズできます。私の場合は、厚い方が踵がしっかりホールドされて快適でした。
おまけでソックスが付属しました。さらっとした肌触りで蒸れにくく、左右専用設計で、かなり調子よいです。
そしてエンボスによるさりげないFLRロゴが素敵。ただしロットによっては別のソックスが付属する場合もあるようです。
カラーは3色展開。
ハーフサイズ展開を省略して高いコストパフォーマンスを実現しているのもFLRの特徴です。ハーフサイズが無いことに不安を感じる方もいるかもしれません。しかし実はユーロサイズの1サイズは0.6~0.7cmと思ったより小さいのです。どうしても微調整が必要になった場合は付属のインソールや別売のエリートパフォーマンスインソールを活用しましょう。
インプレライダーについて
身長:174cm
体重:59kg
ライドスタイル:山岳ロング、ヒルクライムレース、ロードレース
足型の特徴:比較的幅広、非常に甲低
母指球-小指球の外幅:100mm
過去にフィットしたシューズ:FLR F-XX Knit 42サイズ、Bontrager Classique 41サイズ、Bontrager Velosis 41.5Wサイズ
小指球があたって痛みが出たシューズ:FLR F-11 42サイズ、FLR F-75 42サイズ、Specialized S-WORKS SUB6 42サイズ、Giro Privateer Lace 43サイズ
今回のF-9では42サイズを選びました。
さらに進化したアジアンフィット
FLRと言えば、幅広設計が大きな特徴ですが、さらに2%ワイドな「エリートラスト」に変更されました。実際に履いてみると、前モデルF-XX Ⅱよりつま先が収まるトゥボックスの横幅と高さともに余裕があり、指を動かす遊びがあることがストレスフリーに感じます。もしかしたら甲高の足にもフィットしやすくなっているかもしれません。
また、多くの方が圧迫による痛みに悩むのは小指の付け根、小指球だと思います。ここは前モデルも幅広でしたが、F-9になって気持ちさらに幅広になったくらいの感覚です。欧米ブランドのシューズでは小指球に痛みが出ることが多い私ですが、まったく痛みを感じず快適に履くことができました。さらに幅広を求める方はアッパーがしなやかなニットモデルがおすすめです。
もう1点、アジアンフィットになったのが踵です。くるぶしがあたりにくいようえぐれるような履き口になっているのが分かるでしょうか。
アッパーの剛性と耐久性の向上
アッパー素材も大きな変更点です。PowerFit™Technologyというもので、部位によりアッパーの剛性を調整することでフィット感を向上しています。踵側の剛性を高めることでホールド力を高め、高負荷のペダリングでもパワーロスを防ぎます。実際に使用しても確かにホールド力が上がっていることが体感でき、ハードなライドやレースシーン、特にパワーライダーがメリットを享受できそうです。
以前のマイクロファイバーアッパーのハイエンドモデル F-XX Ⅱ は軽量でしなやかなアッパーが特徴でしたので、少し方向性が変わっています。また軽量でしなやかなだけあって耐久性はあまり高くありませんでしたが、新型はカッチリとしたつくりで型崩れせず長く使えそうです。重量面では、前モデルF-XX Ⅱ が42サイズ片側で、実測240g前後だったのに対して、276g(付属インソール)、257g(付属薄型ソール)、243g(インソール無し)と少し重くなっていますが、これは剛性&耐久性とのトレードオフでしょう。軽量でしなやかなアッパーがお好みの方はニットアッパーモデル(236g)があるので、ラインナップとして住み分けられています。
まとめ
FLR F-9は、進化したアジアンフィットにより、幅広の足形に悩むサイクリストにとって福音となるシューズです。剛性と耐久性を重視ならマイクロファイバーアッパーのF-9、軽量性としなやかさを重視ならニットアッパーのFNT-9というように、幅広いライダーに対応する選択肢も備えています。そして極めつけは価格に対する圧倒的な性能。となると、もうFLRを選ばない手は無いでしょう。
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書いた人→坂バカスタッフ・コエサシ