TOJ #8 東京 中村龍太郎

窓から見下ろすビル群を見て帰ってきたことを実感する(千葉在住なのでそこまで都会の人間ではないが)。
日比谷公園のスタートが11時なので朝ごはんはのんびりと。それでも6時30分にはいつも起きてしまう。
体の慣れか、緊張か。結局8日間で「よく寝て疲れとれたぁ~」って日は来なかった。
朝食を食べて、準備。最終日はド平坦なのでSALICEに変更。幸也さんと同じモデルのSALICEは視界が広くて風が入ってこない。
なので山岳とか登りがあると曇りやすい。個人差はあるけど頬骨の関係で僕の場合はほっぺに下レンズが当たってしまう。
と言うわけで平坦ステージと登りステージでSALICEとOAKLEYを使い分けた。
生憎の雨は僕らがホテルに出るころにはやんだ。けど車で日比谷公園へ
公園に着くと多くの人が来ていた。自転車関係の知り合いに加え、会社の同期も来てくれた。B13FDB00-304E-480A-8C27-0D1DE0484C2B

photo by 代表取締役

サインを求められて書いていて、ふと気づくと列ができていたのにはビビった。
ナショナルチームは修善寺でサヤと孫崎を失ってしまい、三人。平坦だけのステージなので逃げに乗るためのアタックは何発でもいけ!と言われる。

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photo by 三井至

日比谷公園をスタートして交差点で止まる。両脇にビルが並ぶ主要道を自転車で走るのは爽快だ。東京マラソンもこんな感じだろうか。奇跡的に幸也さんとアヒル口。

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photo by 太郎田のお母様

結局日常を非日常化することに快感を覚えるのだと思う。
多くの人に見送られレースはスタート。まずは大井埠頭まで向かう。
途中でリアルスタートが切られ、集団のペースが上がる。
前方でアタック合戦が繰り広げられており、とても先頭までは出れない。
周回コースに入っても同じで、やっとこさ集団のペースが落ちた時には逃げが決まっていた。
次にアタックした選手の後ろに付いてもがくも、上手くいかず吸収。これで結局一度もジャパンチームとして逃げに選手を送り込むことはできなかった。
このTOJを通して何度かチャレンジするうちに、先頭にいることによって「逃げが決まるタイミング」というものを見ることができたのは経験になったと思う。
今度はその逃げに乗るためのアタックの精度を上げていかないといけない。
逃げに乗れなかったので集団の中ほどまで下がる。逃げに乗れなかった焦りから、集団が詰まるたびに前に行こうとして、どこのトレインにも入れてもらえず下がる、という繰り返し。
3分ほどの差がついて「残り4周(28km)でペースアップが始まって捕まえに行くな」と予想していたら
前から窪木さんが下がってきて「集団を牽くローテに加わってほしい」と言われる。
ナショナルチームとしては前に選手を送っていないので、スプリント勝負するためには前を追わないといけない。
とはいえ、力のない我々がローテに入るのは邪魔をしてペースが上がらない可能性がある。ので基本は強いチームが追って金魚の糞のようについていくのが
走り方としては汚いけど、セオリー。それをNIPPOは知っていて、でも「入ってほしい」と言うのだから捕まらない可能性があるのだろう。
逃げに乗れずいいとこ無しだったので挽回のチャンス!言わんばかりに岡本に「行ってくるよ」と言うと「僕も行きます」と返ってきた。

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photo by 黒熊さん

本来ならば最後に取っておくべき駒なのだけど、僕と同じ気持ちなのか、はたまた日大の先輩である窪木さんのお願いだからか、なんとなく察して「残れ」とは言えなかった。
追い風区間で窪木さんと岡本を連れて前に行く。ローテをしている先頭近くになってNIPPOの選手に窪木さんが一言二言しゃべると、スペースをあけて「入れ」というジェスチャー。
既に回っていたのは愛三平塚さんとKINAN野中さんとサルツバーガー選手、NIPPO小石くんともう一人。そこに三人で入る。08A769A2-51F8-416C-840B-AD07D3094B61

photo by 五月女さん

モトバイクからタイム差が表示されるたびに5秒ずつ減ってはいるが、残り距離とタイム差を考えるとギリギリの勝負だ。
自分が先頭の時は前の選手のスピードにイーブンか上乗せするように走る。タイミング的にホームストレートで回ってくることが多く。血がざわつく。楽しい。image3

photo by ノブさん

1分25秒差で残り3周くらいになった時に「橋本ぉ~!ひくなぁ~!」と聞こえる。何のことかわからなかったけど自分がキツカッタのとKINANがスペースを空けなかったので下がることにする。
後でわかったことだけど、橋川さんは僕のことを「橋本」と間違えることがこのTOJ期間中に何回かあった。
というのも”橋本龍太郎”のイメージがあるらしい。実際僕のこの名前は橋本龍太郎議員から来ているのだからいい線いっているのだが、レース中は気付けなかった。
中盤に下がって足を休める。岡本はまだ先頭交代に加わってる。強い。
ラスト一周の鐘を聞き、各チームが隊列を組みだしてスプリントに入る体制になる。そのころにはローテも崩壊しており、ブリッツェンとMATRIXのトレインが先頭でペースを上げる。
岡本に声をかけて後ろに入れさせる。ずっと後ろで待機していた間瀬に手で合図して前に来させて、自分の前に入れる。
残り1kmを過ぎて緩いコーナーを抜け直線に入る。間瀬に「左から先頭に出ろ!」と無茶ぶりをしてもがかせる。
しかし先頭には届かず交代。自分の番になり精一杯もがくけど10番手まで上げるのが精いっぱい。残り300mで岡本を発射させてお仕事終了。
岡本はそのままメインの3番手をとり9位。あれだけ先頭牽いてゴールスプリントで結果出せるのだから、日本の未来は明るい。
僕は残りの300mを安全にゴール。これで無事にTOJを完走できた。小さくガッツポーズ。「龍太郎お疲れ~!」という声が沁みる。13339586_1102591703144146_9070795599493783262_n

photo by 武藤圭吾さん

全日本TTを獲っているとはいえ、一社会人である。TOJメンバーに選ばれた時は嬉しい気持ちだったが、同時に「大丈夫だろうか」という気持ちもあった。
JPTのレースは一日だけだから出し切ってDNFでも問題はない。
でも今回は8日間、次の日も走ると思うと気が抜けない。パンクや落車のアクシデントも予想されるし、何より海外の選手がどれだけ強いのかも想像できない。
GWにレースを詰め込み、一人TOJと銘打ってやってみたけど強度が違ったし8日間はできなかった。
練習しようにも、TOJで会社を一週間あけるため、終わらせる仕事が前倒しで増えて時間が取れない。
それでも日本代表として、全日本TTチャンピオンとして走れる機会も滅多にないので、できるだけのことはしたつもりだった。充分であったかというとそうではないが。
だから初日のTTでのチェーン落ちはだいぶ精神的に堪えた。続く京都ステージでもパンクというアクシデントがあり、「終わらせたくない」と必死で集団を追った。
美濃でチームメイトが、いなべで大学の先輩が、南信州でイナーメの皆が、富士山で姉さんたちが、修善寺でコバリンの皆さんと両親が、そして東京でたくさんの方々が「待ってるよ!頑張れ!」と言ってくれたことが、どれだけ僕の力になったか。東京で多くの方に応援されて、完走できて「頑張ってよかった」と心の底から思いました。IMG_20160606_214304
ひとつの挑戦が終わり、振り返ってみると、日本代表選手として、チームの一員として何か力になれたかというとそうではないかもしれない。
完走目的で走っていると「誰か他の、僕より強い選手でもいいのではないか」と考えることが多かった。
それでも自分が走ることに意味を見出すとするのならば、TOJという大会をより身近に感じてもらうことなのではないかと思った。
今回出場した選手の中で自分が一番社会人や高校生などの一般ロードレーサーに近い存在。
自分がTOJという大会でどのように走っているのかは、今まで出場してきたホビーレースで一緒に走ったことのある皆さんの指標になるのではないか。
そう考えて走り切ったTOJの8日間でした。
誤解しないでほしいのは、僕より下や同じくらいの順位の選手はチームのために働き、もしくは自分の勝利のために攻撃し、その結果最終的に遅れてしまった選手であるということです。
僕は完走するのでいっぱいいっぱいでした。全力の完走です。プロの世界で戦うことは非常に厳しく、辛いことなのだと突きつけられました。
それでも、その世界を知ったことは僕にとって大きな財産であり、今後のモチベーションになります。さらに強くなれる。頑張ろう。13320385_982952361825873_8883761804856986771_o

最後に橋川監督、井上マッサー、高橋メカニックの手厚いサポート体制なくしてはステージレースで戦うことはできませんでした。ありがとうございました。

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普段自分のことは、移動から体のケアからメカから(フリーダム丸投げだが)自分でやる僕にとってはすごく違和感があったが、レースにだけ集中できる環境を作っていただけるのは非常にありがたかったです。
それと、自分よりも若く、深く話したこともないメンバーでの即席であったけど、チームの一員としてみてくれたチームメイトには本当に感謝しています。
短い期間でしたが共に戦った仲間の今後の活躍を電柱の陰からコッソリと眺めたいと思います。頑張れ若人、僕も頑張る。
今週末はMt富士ヒルクライム。二連覇を目指して。

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