レースがない時間を我々トライアスリートはどのように過ごすのか? トライアスロンコーチ 久保埜一輝

世界的に感染症が広がり、レースがない日々が続いています。 僕自身も2019年の秋に出場したレースが最後となっており、予定していたレースは全てキャンセル。 今シーズンは、小さなレースが再開し始めていますが、海外アイアンマンレースなどは今年も厳しそうな雰囲気があります。

トライアスロンコーチをしていて、よく生徒さんからレースがない中で練習に対してやる気が出ないというお話をされます。 確かに、目標レースが定まらない中で継続的に練習を積み上げていくのは精神的には辛いことが多い気がします。 特に、無理やり”やる気”を出すのは長続きしないので楽しくないですし、お勧めはしません。

僕も新型コロナウィルスの影響でレースがない中で高いモチベーションを維持するのに苦労した時期もありました。 そんな中で、数年後に通常のレースが戻ってくると信じて今は練習を積み上げていくことができています。 自分が好きでやっていて、目標があるのなら達成するも失敗するも全て自分の責任。

 

今はじっくりとレースの準備が出来るチャンス

趣味でやっていても(熱量は違えど)、沢山のお金と時間と労力を使ってトライアスロンをやっていると思います。

「レースで完走できなかった」 「目標が達成できなかった」 「こんな辛い思いするなら、もっと練習しておけば良かった」 多くの方がレース本番でこういう思いをして後悔したことがあると思います。 僕も沢山経験があります。

そして今は、レースが無いからこそタイムやペースを気にせず、しっかりと準備できる良いチャンスだと思っています。

 

目標を設定し、そのための準備をする

自分が達成したい目標(タイム・順位・完走)などを明確にして、そのために必要なことを精度高く反復していき、レースで達成出来た時の達成感は計り知れません。 自分が出来る限りの努力して得た結果は、どんなレベルでも凄く気持ちの良いものです。

完走・タイム・順位、色んな目標があって良いので、その目標に対して自分なりに満足のいく努力をしてレースの時を待ってみましょう。 レースに向けてしっかり準備できた時は スタートラインに立った時のワクワク感 ゴールした時の達成感 いつも以上のものが感じることができると思います。

参考に僕の設定している目標を書いておきます。

【Swim】
・アイアンマンのスイムラップ51分
・100m×10(1’30) 2~3ビートで平均1分10秒
・400m ノーアップウエットスイムで4分35秒
・4~6ビートでのタイムを2~3ビートで泳げるように

【Bike】
・アイアンマンのバイクラップで4時間50分
・レースペースFTP70~75%前後をケイデンス88~92の範囲で持続
・FTP(TT Position)を300~310wを維持
・エアロフォームの見直しと力強さを強化

【Run】
・アイアンマンのランラップで3時間10分
・着地〜離地までの衝撃を1段階にしストライド長増
・400m~1kmのスピード練習の頻度を増やしスピード強化

 

苦手種目や弱点克服に専念できるチャンス

僕の例で言えば、この期間でスイム強化を。 トライアスロンの中で一番競技時間が短い種目、かつ自分の中でも比較的得意種目ということで、今までは後回しにしてくることが多かったスイム。 ですが、2019年のアイアンマン世界選手権では全く太刀打ちできなく、スイムの強化が必要だと強く思いました。

この1年半の間は、スイム練習でも新しいことに取り組んでいくこともでき、今まで掴めなかった感覚も得られたりと良い期間になり、レースが続いていた状況ではなかなかできなかったことでもあると思います。 自分の苦手分野を克服するにも良いチャンスかもしれませんね。

 

ここからは上で書いた目標達成のために行う取り組みを具体例として紹介します。

【Swim】個人メドレーのキック練習50×10(1’00)

レースではクロール以外の泳ぎはしませんが、個人メドレーによってクロールだけでは得られない色んな感覚を掴むことが出来ます。水の中でのバランス感だったり重心の取り方の幅を持たせるために行います。

 

【Swim】毎日肩周りストレッチ10分

僕の場合、やらないと動かなくなる、動きにくくなるのということがあるので、毎日継続しています。

 

【Bike】固定ローラー7割、3本ローラー2割、実走1割

実家がある北海道なら話は別ですが、東京では実走できる環境に行き着くまでに時間がかかりますし、信号があったり交通量が多かったりと不便なので、1年中一定の環境で練習できるインドアを中心にしています。3本ローラーは、固定ローラーと違ってバイクを左右にずらしながら乗れるので実走の感覚に近づきますし、一定のトルクでペダリングする感覚を養うために使っています。固定ローラーしかやっていないと、実走したときの違和感が大きくなる印象です。

 

【Bike】ローラーでも実走と同じフォームを意識

 

【Bike】大臀筋、中臀筋の補強トレーニング

スクワット・ランジ系の動きを不安定なボードや下駄を履くことで、お尻の大きい筋肉を使いながらバランスを取るというトレーニングを行なっています。アイアンマンのランでは、疲れ切って普段の良い姿勢やフォームを保てない中で動かないといけないので、究極な場面で凄く役立ちます。

 

【Run】Box Jump系の動き作り

 

【Run】腕振りスイングで入力アシストの動きをジョグから

 

【その他】楽しくなくなったら練習は強制終了

目指す目標が高くなっていくと、練習は過酷になっていきますし、それなりの練習を積んでいく必要があります。なので、練習中の集中力やモチベーションも同じく高くないと、質の悪い練習になってしまいます。質の悪い練習を重ねていくうちに、悪い流れが出来、長期間そういう雰囲気を引きずってしまうことが多いです。そうならないように敢えて逃げ道を作っておき精神的に余裕を持たせるようにしています。僕の場合は、その方が力が発揮できる傾向があります。

 

【その他】良い動き、悪い動きは全て言語化する

これは人によると思いますが、感覚的なことを自分の表現で言語化することで、よりイメージしやすくなります。例えば、「足先に意識がいっている」と感じる時は力んでいる感じがしますし、「体幹部分で脚を動かす」感覚があるときはリラックスかつパワフルに動けていることが多いです。

 

「鍛えて待つ!」

僕が消防官時代に教官から頂いた言葉です。 とにかく、今はこれに尽きると思います。 その先には今よりも、さらに楽しいトライアスロンライフが待っているはずです!

 

久保埜一輝選手

使用バイク:Felt IA FRD, AR Advanced

2013年 アイアンマン・ジャパン 6位
2015年 アイアンマン・ジャパン 15位
2017年 佐渡国際トライアスロン A 優勝
2018年 佐渡国際トライアスロン B 優勝
2019年 アイアンマン・ケアンズ 25-29歳カテゴリー 優勝
2019年 佐渡国際トライアスロン B 優勝
2019年 アイアンマン世界選手権 25-29歳カテゴリー 23位(日本人総合トップ)

父親は、元プロトライアスリートでアイアンマンハワイ 9回出場。その影響で6歳からトライアスロンを始め、3兄妹とも世界選手権代表選手となる。コーチとしても、インドアトレーニングのノウハウを中心に幅広く活動。オンラインメニュー作成依頼等その他お問い合わせはFacebook にて。

https://www.facebook.com/kazuki.kubono

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